第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」

「令和らくご改造計画」

#4

 そんなことを考えながら、例によって楽屋の隅でぼんやりしていると、楽屋の電話が鳴った。

 すぐにそれに出た前座さんは、血相を変えた。

 地方公演の楽屋で、噺家が一人、死んでいた。

第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」――

 古典亭しん作(こてんてい・しんさく)。人気のある二ツ目だった。

 倒れていたのは、楽屋の隅。置かれた火鉢のそばで、頭から血を流していたという。

 警察は、事故の可能性が高いと判断した。楽屋は狭く、高座後なら足腰に負担がかかっていた可能性も高い。それが一日に何席も高座をこなしたあとであれば、疲れで足元がおろそかになることも、十分に考えられる。

 その日は、しん作の独演会(単独公演)だった。終演後、ほっと一息ついた際に転倒し、頭を火鉢にぶつけ……そのまま。これが、警察の当初の見解だった。

 しかし、これを聞いた楽屋の反応は、まるで違った。しん作の場合、「それで済ませていいのか」という空気が、瞬時に広まったのだ。

 しん作は、いわゆる人気者だった。チケットは比較的よく売れ、客席の反応も悪くない。

 だがそれは、あくまで“外から見た評価”だった。

 しん作は、新作も古典も等しく愛し、演じていた。どちらかを踏み台にするつもりもなければ、どちらかを利用して目立とうという気もなかった。ただ、好きだったのだ。落語というものが。

 それ以上に複雑なことは考えていない。器用で、実際にセンスも腕もあったから、何をやってもよくウケる、素直な芸だった。

 しかし、仲間内での評価は違った。

 「彼は、何がやりたいのかわからない」
 「新作なら、もっと振り切らないと」
 「古典をやるなら、新作が邪魔をしている」

 売れっ子に対する僻みもあるだろう。だが、そんな言葉が、本人のいない場所で、当たり前のように交わされていた。