第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
「令和らくご改造計画」
- 落語
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
#4
そんなことを考えながら、例によって楽屋の隅でぼんやりしていると、楽屋の電話が鳴った。
すぐにそれに出た前座さんは、血相を変えた。
地方公演の楽屋で、噺家が一人、死んでいた。
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」――

古典亭しん作(こてんてい・しんさく)。人気のある二ツ目だった。
倒れていたのは、楽屋の隅。置かれた火鉢のそばで、頭から血を流していたという。
警察は、事故の可能性が高いと判断した。楽屋は狭く、高座後なら足腰に負担がかかっていた可能性も高い。それが一日に何席も高座をこなしたあとであれば、疲れで足元がおろそかになることも、十分に考えられる。
その日は、しん作の独演会(単独公演)だった。終演後、ほっと一息ついた際に転倒し、頭を火鉢にぶつけ……そのまま。これが、警察の当初の見解だった。
しかし、これを聞いた楽屋の反応は、まるで違った。しん作の場合、「それで済ませていいのか」という空気が、瞬時に広まったのだ。
しん作は、いわゆる人気者だった。チケットは比較的よく売れ、客席の反応も悪くない。
だがそれは、あくまで“外から見た評価”だった。
しん作は、新作も古典も等しく愛し、演じていた。どちらかを踏み台にするつもりもなければ、どちらかを利用して目立とうという気もなかった。ただ、好きだったのだ。落語というものが。
それ以上に複雑なことは考えていない。器用で、実際にセンスも腕もあったから、何をやってもよくウケる、素直な芸だった。
しかし、仲間内での評価は違った。
「彼は、何がやりたいのかわからない」
「新作なら、もっと振り切らないと」
「古典をやるなら、新作が邪魔をしている」
売れっ子に対する僻みもあるだろう。だが、そんな言葉が、本人のいない場所で、当たり前のように交わされていた。
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