毎日映画、毎日浪曲

「コソメキネマ」 第九回

ヤルセナキオ

 今年最初に映画館で観た映画は、成瀬巳喜男監督の『噂の娘』と『妻よ薔薇のやうに』で、昨年末最後に観た映画も成瀬監督の『鶴八鶴次郎』で年を跨いで成瀬作品が続きました。

壁の飾りつけがいつも楽しい、神保町シアター

 成瀬巳喜男監督は好きな映画監督の一人で、上映された時はなるべく観に行きたいと思っています。情感のある、でもやりきれない話も多く、やるせない作風から「ヤルセナキオ」と呼ばれたこともあるそうですが、観終わった後は、何か清々しさと明るさを感じます。チンドン屋が好きだったようで、チンドン屋が必ずといっていいほど登場するところも良いです。

 成瀬巳喜男監督を初めて観にいったのも、チンドン屋が関係しています。初めて観た作品が『鶴八鶴次郎』でした。

 チンドン屋に入った当時、小松家さんという三代続いたチンドン屋のキミ子さんというお姐さんがいました。そのキミ子さんが、昔、撮影所の近くに住んでいて、時々映画に出演した、鶴八鶴次郎にも女中みたいな役で出たことがあるという話をしていました。後日その話を思い出し、観に行ったのがきっかけです。

 映画のラストシーンで長谷川一夫演じる鶴次郎にお酒を運んでくる大きな目の少女に、キミ子さんの面影を見るような気がしますが、今となっては確かめる術もありません。

今回の映画

鶴八鶴次郎

監督:成瀬巳喜男
出演:長谷川一夫(鶴次郎)、山田五十鈴(鶴八)、藤原釜足、大川平八郎 ほか
公開:1938年(昭和13年) / 上映時間:89分

鶴八鶴次郎(映画.com)

鶴八鶴次郎(クリックするとAmazon Prime Videoに移動します)

(毎月23日頃、掲載予定)

こちらもどうぞ!