講談界を駆ける一鶴イズムの継承者 田辺銀冶(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第25回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/02/04
名前は背負うものではなく、育てるもの
―― 確かに「銀治(ぎんじ)」と間違えやすい。(※治の左側は、さんずい「氵」) でも私は、メクリや名ビラを見て、寄席文字で書かれた「田辺銀冶」という名前は形がいいし、カッコいいし、似合っているなあと思います。
銀冶 そうですよ! これはいい名前なの(笑)。この名前を付ければ、人の心に届く講釈師になるし、いい仕事も山のように入るし、講談の世界で大看板になれるっていう名前を付けてもらったんですから(笑)。
―― ところで「田辺一鶴」という名前を継ぐ気はありませんか。
銀冶 まったくありません。名前を継ぐことに興味がない。「一鶴」というのは凄い名前で、師匠だからこそ名乗れる名前です。だから名乗りたいという人がいれば、その人がなればいい。私はこの「銀冶」という名前をとっても気に入っているので、初代として、この名前を大きくしたいと思っています。
ここに登場する「東京ニューヨーク寄席」は田辺一鶴が、講談と銭湯という日本を代表する文化を地域に浸透させていきたいと、2005年(平成17年)2月に、一鶴も長く暮らした江戸川区内の銭湯で始めた会。『妖怪軍談修羅場』は、若い頃に漫画家水木しげるの助手の経験がある一鶴が作った、最終的には500を超える古今東西の妖怪が次々に登場する一席である。
―― 昨年、新宿永谷ホールで「田辺一鶴十七回忌追善興行」が開かれましたが、銀冶さんにとって田辺一鶴という講釈師はどんな師匠でしたか。
銀冶 今思えば、最高の師匠でした(笑)。私にとって残念だったのは、再入門して4年ぐらい前座時代を送ったんですが、その間、くすぶっていたので楽しいことがなかったんです。希望を持って戻って来たのに、講談界のムードに飲み込まれてしまって、その間に師匠が亡くなってしまった。
師匠にはずっといてほしかった。努力家で、研究熱心で、面白くて、やさしくて、「辞めないでお休みしなさい」という言葉は、今でも感謝しています。あの言葉があったから戻ってこられたんですから。

―― 師匠に、今、戻って来てほしいですか。
銀冶 そうですね。私、海外から戻って来た時に、師匠に「海外でも講談やったのか」と聞かれて、「はい」って嘘をついてしまったんです。今は海外に講談をやりに行きたいですけどね(笑)。今、講談に熱中している状態で、師匠に色んなことを伺ってみたかったという思いは強いです。
―― 師匠から教わった教えで印象に残っていることはありますか。
銀冶 「人の真似も、俺の真似もするな」ということです。悩みますよね。どうやったらいいんでしょう。師匠、教えてくださいよ!
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