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謂れなきものたちの飛躍
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林家 彦三
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訳者の高橋健二には、特別な思い入れがある。その人は私にとっての青春そのものであったヘルマン・ヘッセの訳者であり、それは主に新潮社の流氷のような色味の文庫版を絶版も含めて集めて読み、中でも畢生(ひっせい)の大作である『ガラス玉演戯』の上下巻だけはなかなか貴重で入手できずにいたが、この少し前に、私はごく簡単に手にしたところであった。取り寄せたのは、同じ古書サイトである。私は切望していた最後のピースを、あっという間に手に入れたのであり、ケストナーの準備が進まなかったというのも、この本に夢中になっていたからである。結局、私がその年末の落語会でかけたネタは、「井戸の茶碗」であった。高座納めであった。
それからこの年も鈴の音を鳴らしてやってきたクリスマスは予定もなく、私はただ飾られた街を歩いて、少し飲み、また歩いた。卑屈になっているわけではない。また強がりでもないが、私はそのようなものたちを通り過ぎた頃から――例えば恋人のための街頭広告や、作り物のヒイラギや天使、トナカイ、モミの木、赤や緑のきらきら――年々、子供心に、この安いような聖夜の駅前が好きなのであった。今年も良いクリスマスであったと思った。呑気なものである――。
ひら日でも、もの日でも、ケでも、ハレでも、起源をただし始めると、どうやら、あやしい。ふるさとみたいなものを探ろうとするが、あてがない。それでも、どうにかして故事をつけようとする、どんなに安直なものにでも、その過程、成長や、傷や、その修復があって、あらゆる新しいものたち、謂れなきものたちの手順の省かれた物語にこそ、何かがあるような気がしている。正しい順序を踏むことだけが物語の祝祭ではないということを知ることだけが、自分の中にある古いものたち、謂れあるものの正しさについての敬意だとすれば、あらゆるクリスマスオーナメントはどんなに安いものであれ、綺麗なはずだし、それを正統なものとして享受できるだろうと思う。この日の、祝祭の、もとをたださぬうつくしさを、信じてみたい――などと考えながら、私のクリスマスは終わった。若手の噺家だって、このくらいのことは考えても、罪にはならないでしょう。私も結局、何の謂れなきものなのだから。それが昨年末。

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