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2月9日は、服の日 →普段から着物で生活する男の不肖

「エッセイ的な何か」 第9回

 完全に着物へ切り替えたターニングポイントとしては、ちょうど我が師匠・先代夢丸より「隠居するから名前を継げ」と言われていた時。

 うちの師匠は、とにかくお洒落な人であった。洋服も和服も。ビシッと決まったマオカラー(服部幸應さんが着ていた、学生服みたいなやつ)、ニットや細身のズボンも着こなしていた。

 僕はと言えば、薄汚いジャージにジーンズ。二ツ目の“三笑亭夢吉”であれば、それでもまあ良いのだろうが、さすがに真打の“三笑亭夢丸”になった場合、それはまずかろうと。

 「おいおい、今度の夢丸、ジャージだぜ……」

 などと後ろ指でもさされた日には、先代に顔向けもできぬ。ならばいっそのこと、洋服を諦めて着物にしてしまえ、というきっかけだったと思う。着物ならよっぽど変な物でなければ、どこへ行っても失礼に当たらないし。あと、すぐ見つかるので、待ち合わせにも便利。

 しかし、先ほど申し上げた通り、極度の貧乏性のため、あまり着ないくせにタンスの中にある洋服は捨てられないのだった。

 そんな生活を続ける中で、若干の変化があった。演芸雑誌の『東京かわら版』にて連載されている土井ラブ平さんのコラムがあるのだが、これが「噺家、もしこういう洋服を着たりなば」という想像をするというコーナーである。

 そのページに昨年、不肖私のことを書いていただいたのだ。

 この連載は、洋服メーカーさんとタイアップしているらしく、記事にしていただけると、その洋服まで頂戴できるという。

 という訳でいただきました! 中に着るシャツまで付けてくださった。やはり、頂戴したからには着させていただかねば!とズボンも調達し、着てみたところ……

 いやぁ、動きやすいですね、洋服って!

 「今さら、何を言ってるんだ」と思われるかも知れませんが、ズボンって素晴らしい! 靴も! 自転車こぎやすいし!

 よく「普段、着物を着て歩かない人が、下駄や雪駄を履いて歩くと筋肉痛になる」と言うが、逆に靴ブランクがあった僕は、靴で歩くだけで筋肉痛になりました。下駄と靴では使う足の筋肉が違うのだろうか。

 もう、この楽さを知ってしまったからには、後に戻れないかも……。