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2026年3月のつれづれ(玉川太福の受賞、玉川奈々福の徹底天保水滸伝、『深夜食堂』&『陰陽師』の浪曲化)

月刊「浪曲つれづれ」 第11回

『深夜食堂』&『陰陽師』が浪曲化

 またもや自分の話題で恐縮だが2月7日(土)に、真山隼人・沢村さくらコンビが小学館ビックコミックオリジナル連載作品、安倍夜郎『深夜食堂』の浪曲化を深川江戸資料館小ホールで行った。ご存じのとおり深夜食堂のマスターと客たちのやりとりで進んでいく話で、中心は会話、ほぼ店から出ないという点もあって、これをどうするのかと疑問に感じていた。

 実際の口演を聞いて理解したが、マスターの一人語りがあるというのが口演の秘密兵器なのだった。通常の浪曲でモノローグが入ることは少ない。演者が登場人物について語っている箇所の上に、登場人物たちの台詞が載る。そこが啖呵で綴られる部分で、随所に節が入る。節の部分で感情が励起するように計算されているのだが、そこにすべての土台としてマスターのモノローグが加わる。これが入ることにより、演者である真山隼人が語っているような、マスターが呟いているような、淡い汽水の如き領域が醸し出される。これは実に新鮮であった。

 真山隼人は新たな取り組みとして文芸浪曲の復活・復興を唱えているが、こうした語りの多様性は、今後の武器になるはずだ。浪曲「深夜食堂」は今後4月19日(土)に近鉄アート館で開催される。隼人に「深夜食堂」浪曲化を思い立つきっかけを与えた、落語家の桂雀三郎がゲストで出演する。関西の浪曲ファンはこれを聴き逃すなかれ。

 もう1つ宣伝をば。昨年初演が好評で迎えられた天中軒すみれ・広沢美舟の夢枕獏・原作、浪曲「陰陽師 琵琶玄象」の再演が決定した。今回は東京・荒川区の町屋ムーブホールで5月27日(水)19時から開催されるほか、京都・岡崎のNAM HALLでも5月30日(土)18時開演で口演される。初の関西進出である。こちらもぜひ。

(以上、敬称略)

(毎月9日頃、配信予定)

杉江松恋『芸人本書く派列伝 オルタナティブ』第1回