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古今東西を自在に読む講釈師 松林伯知(中編①)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第28回

落語ではなく、講談を選んだ理由

伯知 『真田幸村大坂入城』や『お富与三郎』です。

伯知 人前で大きい声を出すということは狂言でやっていましたし、内容が歴史のことですから、これだったら自分の好きな歴史の話を何でもできるんじゃないかと思いました。

伯知 『真田の入城』を一年間やって、発表会の打ち上げがあったんです。その時、師匠が「弟子入りしたいんじゃないの?」「いいですね」といった話があり、その時にふと、狂言でやった舞台のことも思い出したんです。東京大学の観世会が国立能楽堂で『敦盛(あつもり)』をやることになったんですが、ちょうど間狂言(あいきょうげん)を務める狂言方の学生が東大にいなかったんです。国立能楽堂の本舞台を踏めることもそうそうあることではないので「やりたいです!」と名乗りを上げました。今思うと畏れ多いこと甚しいんですが……(笑)。

 敦盛の最後までの一部始終を出家した熊谷直実(くまがいなおざね)に聞かせるために、本舞台の中央に座って合戦の様子などを混じえて一人で語る……。講談だと『青葉の笛』の部分ですよね。歴史を朗々と語って聞かせるのは良いなあ、面白いなあと、この時にも思ってたんですよ。そもそも歴史の仕事につきたかったわけですし、“弟子入り”というワードを聞いて、講談なら全部好きだったものが仕事でできるじゃないか!と繋がったという次第です。

 それからまたしばらくして「あれ、本気なの?」と聞かれて、まず(神田)紅葉お姉さんと上野で面接をすることになりました。「なんで落語家じゃないのか」「なんで女性の師匠のところに来たいのか」といったことをあれこれ聞かれました(笑)。そりゃそうですよね、『落語ファン倶楽部』なのに、なぜ講談師に?と、傍から見れば、謎で怪しさ満点ですよ(笑)。狂言をやってきたことや、歴史が好きな硬派であること。それに落語の『井戸の茶碗』や『紺屋高尾』『鼓ヶ滝』より、原典である講談のほうに興味があったという強い思いを伝え、「世話物ばかりでなく、歴史も読めるし、新作もできる」と思ったのが決定打でした。