古今東西を自在に読む講釈師 松林伯知(中編①)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第28回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/03/13
知識と取材を物語へ――講談という表現の器
―― 伯知さんは新作や復活物にも積極的に取り組んでいますが、講談に対してどんな思いで臨んでいるんですか。
伯知 自分の持っている知識や、取材してきたものを形にできる活動で、きっと興味を持ってくれる人がいるはずだと。そうして広く伝えられるのが講談であると思っています。面白い活動ですし、私はマニアなので、他のジャンルに興味のある人は、かつての私がそうだったように、それを深めて講談の方へ興味を転じていける。そうやって仲間を増やしていきたいですね。
―― 紅先生をはじめ、若くしてお亡くなりになった陽司先生も積極的に新作に挑んでいました。それに講談協会でも新作を多く手掛けている人がいます。
伯知 幕末明治史を研究していた大学生の頃、やげん堀の講談会で、陽司兄さんが『坂本龍馬』をネタ出しされていて、それまで幕末を扱った講談をあまり見かけなかったので、「龍馬の講談があるの!?」と。聴きに行ったら面白かった。田辺派の先生の新作にも興味が出て、両国亭でやっていた「たなべよせ」に行きました。
そう言えば凌鶴先生が星野仙一とドアラを題材にした講談を読んでいて、ドアラは喋らないからパントマイム風に描いていたのが面白くて、死ぬほど笑ったのを今も覚えています。その一門を束ねた一鶴先生も『妖怪軍談修羅場』を読んでいたことを知り、こうした話も講談にできるんだ、講談の新作の可能性は無限にあるなあと実感しました。
―― 今、頭にある新作の構想やこんなストーリーを読んでみたいというのがあれば教えてください。
伯知 とにかく、思いついたり、研究して挑んだ話など、いろんなことをこれまで新作にしてやってきました。今やりたいのは時代小説的な、オリジナルの主人公による連続物です。原作が基本的にない物語です。
かつて雑誌なんかで、講釈師が生み出した時代小説……。「書き講談」とも呼ばれているもので、「雑であんまり面白くないよ」「文字で読むもので語りにしてもつまらないよ」という方も多いと思うんですが、改めて目を通してみると、面白さの原石的なものが揃ってると感じるんです。速記として山ほど残っているわけで、荒削りでもこういった新しい物語をガンガン紡いでいっていた当時の講釈師に憧れがあるんですよね。
今、書店に行くと、いろんな作家さんたちが、新しい歴史人物や題材を次々発掘しては、山ほど時代小説を発売しているじゃないですか。あれが羨ましい。私の好きな山田風太郎の『幻燈辻馬車』等の明治物や「忍法帖」シリーズにも憧れがありますし、自分でもオリジナルの伝奇物や時代物を書いて、高座で読んでいきたいですね。
田辺凌鶴が読んだ話は『ドアラと星野』。そしてその師である田辺一鶴は、水木しげるのアシスタントを務めていた経験もあり、その水木作品の登場する妖怪の名を、講談の修羅場口調で読み上げていく話である。
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