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手紙 ~拝啓、四十八の君へ~

「噺家渡世の余生な噺」 第11回

三、満員でなくとも

真打昇進披露興行のある日。平日の雨模様。
客席は、満員御礼とはならなかった。

ある方が来てくださった。
私はつい、「満員をお見せしたかった」とこぼした。

するとその方は、静かに言った。
「埋まらなかった席を見るな。来てくださったお客様に感謝しなさい」

胸に刺さった。

私はまだ、“足りない数”ばかりを見ていたのだ。
高校の卒業式は、昨日のことのようである。
あっという間に四十八歳。きっと六十歳までも、瞬きの間だろう。

六十の私は、同じ悩みを抱えているだろうか。
それとも、少しは誰かの役に立つ側へ歩みを進めているだろうか。