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〈書評〉 サライ 2026年4月号 (大特集:落語 講談 浪曲 サライの「演芸」 令和の名人)

「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第11回

正攻法で芯を射抜く白酒

 二葉とは逆に、普通の人よりは知っている、と言っても許される落語家が桃月庵白酒である。『桃月庵白酒と落語十三夜』(KADOKAWA刊、桃月庵白酒・著、杉江松恋・聞き手)を作るための連載期間中、毎月会って落語観を聞かせてもらっていたからだ。

 その連載の冒頭で、早稲田大学落語研究会時代のことが話題に上がり、「部室でうだうだ話しているのがいちばんおもしろいと当時は感じた」という話から、「酢豆腐」の冒頭は部室の気怠い感じとなったのに私は気持ちを惹きつけられた。当時「伝統を現代に」式の物言いは多かったが、遥かにそれより身近に感じられる捉え方だったし、サブカルチャー的な臭みもなかったからだ。桃月庵白酒という落語家にはそういう、正攻法で芯を捉えに来るような感じがある。

 この特集での談話でも自身の落語を「カレー」に喩えた箇所がいい。

 こういう喩えが本当に上手い落語家なのである。

 落語好きで知られる、さだまさしの特別寄稿「幸運な落語好きの噺」を挟んで、特集は講談の項に移る。筆頭に来ているのは神田伯山、「徳川天一坊」連続読みの密着記事が目玉だ。あとの二人は、一龍斎貞鏡と今年の真打昇進が決まっている田辺いちかである。人選に異論がある方もいるかと思うが、「令和の」と銘打っている特集では妥当ではないかと思う。