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狸札、 野ざらし、 子別れ

「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第12回

狸札、 野ざらし、 子別れ

子別れ(画:おかめ家ゆうこ)

林家 はな平

執筆者

林家 はな平

執筆者プロフィール

奥深い「オチ」の世界

 落語には、「オチ(落ち)」があり、そこにはいろいろな仕掛けや工夫が込められている。本連載では、“演じる側の視点”から、筆者なりにオチのタイプを★★★で分類し、[あらすじ][オチ][解説]の順に紹介する(の数は、第1回を参照ください)。

 第12回は、狸札野ざらし★★子別れ★★★を紐解いていこう。

三十四席目 狸札 (たぬきさつ) 

[ワンポイント]
狸が出てくる落語はいくつかあるが、どれも共通しているのは「純朴な恩返し」。狐のように人を化かすのではなく、どこか抜けていて憎めない存在なのだ。この噺も同じで、細かい筋よりも子狸の人懐っこさを味わうことが理解の近道になる。

【あらすじ】

 夜中に男が寝ていると、子狸が訪ねてくる。「昼間、子供たちに捕まって食べられそうになっていたのを助けてくれた恩返しがしたい」と言う。仕方なく子狸を一晩泊めてあげることにする。

 翌る日、子狸は人間の子供に化けて恩返しを始める。家の掃除をしたり、朝ごはんを作ったり。

 また、子狸はお札に化けられると知った男は、札に化けてもらって借金を返そうと、十円札に化けてもらう。そこに借金取りの小僧さんが訪ねてきて、子狸が化けたお札に気づかずに、それをもらって帰っていくが……

【オチ】

 上手く行ったと思いきや、子狸は慌てて戻ってくる。

子狸 「親方、信用がないですね。さっきの小僧さん、親方がこんな札を持ってるわけないって、表へ出たら、あたいのことを天日に透かして見たり、あたいを小さく折り畳んでがま口に入れたり。あんまり苦しいから、がま口の底を食い破って逃げたんですが、その時に一円札が二枚ありましたから、お土産に持ってきました」

男 「札が札ぅ持ってきちゃいけねえ」

【解説】

 
 狸の出る噺は『狸賽』『狸鯉』などいくつか存在するが、仕組みは同じで、狸が人間に恩返しをする話である。

 これらの噺は、以前は一続きに繋がっていたようだが、現在では、それぞれ独立させてやる場合がほとんどである。このオチも、その長い噺を途中で切る時用の名残(なごり)かもしれない。

 この噺は、とにかく子狸が可愛いのが重要だ。もはや、それだけ表現できれば成功だと思う。子狸なので喋りのトーンは子供っぽくして、手を丸めて動物らしさを出す。こまっしゃくれた感じを出さないで、純朴な子狸を演じるのが良いと思う。

 狐が化ける噺もあるが、狐の方は人間を騙したり、少し悪さをするが、狸はそんなことはなく純粋な感じがする。札に化けてからも見せ所で、表はちゃんと札なのに、裏は毛が生えていたり、お茶目な一面があるところがやっぱり純朴だと思う。

 芸は人なり――。柳家の芸の真骨頂である。