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地獄

「座布団の片隅から」 第12回

 こうなったらいっそのこと、眠るのは諦めて、隣の歌彦さんと喋って起きていようか……。悩んでいると、歌彦さんはおもむろにポケットからイヤホンを取り出した。それを耳栓代わりに装着し、僕に言い放つ。

歌彦 「いやー、イヤホン持ってて良かった~。じゃ、兄さん。おやすみなさい!」

 歌彦さんは、早々に僕を見捨てた。結局、僕と小はだ兄さんは、この漫談を直に4時間(往復8時間)もの間、受け続けることになってしまった。仕方ないので、その漫談をメモしながら耐えることにした。

運転手 「昔は、深夜バスの運転手やってましてねぇ、はいー。その時は、眠くて眠くて。いろいろ試しました。タバスコを飲む、目にワサビを塗る、メガシャキを飲むとかね。はいー。でもダメなんですね。いろいろ試して一番効いたのはね、はいー。明治のアーモンドチョコを3つ食べる。これですね。あ、今日は眠くないですから。はいー。今日は事故を起こしませんから、大丈夫です! 本当に大丈夫です!」

 「大丈夫です!」を2回言うと、大丈夫じゃなくなる。不安にしないでくれ! あと、合間の「はいー。」という口癖がすごく気になる!!

運転手 「あそこに見えるのが、△△山ですね。はいー。今日は晴れてるからよく見えますね。ちなみにこの間、ここの山で○人死にましたねー、はいー。」

運転手 「まもなく到着ですね。はいー。クマ出没注意って看板がありますね。ここで見つかった例はないんですが……ま、もし今日クマに出会ったら……その時はおしまいということで。はいー。」

 ……だから、最後に不安にさせるなァァァァ!

 こんな調子で、オチでマイナスなことを言うパターンの漫談が続いた。4時間ほどが経って、スキー場に到着したが、直に食らい続けた僕と小はだ兄さんは、ぐったりしていた。小はだ兄さんが言った。

小はだ 「『寝床』みたいだったね……」

 秀逸な例えである。

 帰りも運転手さんの漫談は続き、最終的におかみさんとの馴れ初めまで語っていた(笑)。

 やっとの思いで池袋に戻ってきたら、イヤホンをしていた歌彦さんは元気だった。

歌彦 「いや~、スキー楽しかったっすね~!!! 来年もこの4人で滑りましょう」

 ―― 歌彦さん、運転手も入れたらスベったのは5人だよ。

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