NEW

第九話 「地獄のモーニングコール」

「令和らくご改造計画」

#3

 「本当に若い層に届けようとしている人なんて、一握りもいないじゃないですか。そのくせ“ほしい”“ほしい”って、他力本願にも程がありますよ。他力本願寺のご住職もびっくりです」
 「そんな人、いないだろ」

 すると、楽屋の裏口がバカっと開き、人が入ってくる。

 「どうも、他力本願寺 十九代目 住職です」
 「あっ、いたんですね。失礼しました」

 そう言って、そのまま丁重にお帰りいただく。

 ……しかし、確かに彼の言う通りだ。

 僕の場合は、日々の高座や稽古、創作は基本として、さらに配信も、動画も、SNSも、やろうとは……思っている。

 だが、日々の限られた時間の中ですべてをこなすのは正直しんどく、なかなか前に進まない。気づけば二ツ目になって三年。結果として、満足のいく発信は未だ叶っていないのだ。

 小さく息を吐く。

 「……ごめん」

 すると彼はすぐに首を振った。

 「兄さん一人に言っているわけではありません」

 それから、少しだけ声のトーンを落とした。

 「でも、兄さんが内輪揉めをしている間に、時代は進んでいるんです。落語のアニメも始まりました。新規の層が流れてくる。その受け皿を、誰が作っているんですか?」
 「ち、ちょっと待って。心当たりないんだけど、“内輪揉め”ってなんのこと……?」

 「賞レースですよ」
 「うわ、やば!」

 思わず吹き出してしまった。

 しかし何となく、彼の言いたいこともわかる。最も優先すべきはそこではないと言うことだろうか。

 少し間を置いて、改めて尋ねる。

 「で、君は何がしたいの?」

 彼は一歩踏み込み、はっきりと答えた。

 「先輩方を、もっと働かせます」
 「……働いて“ほしい”、じゃなくて?」

 ゆっくり首を振る。

 「働かせるんです」

 第九話 「地獄のモーニングコール」――