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優雅な航海中の後悔を公開

「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回

優雅な航海中の後悔を公開

25年前に船上で出会ったおじさん、お元気ですか?(画:大久保ナオ登)

桂 三四郎

執筆者

桂 三四郎

執筆者プロフィール

都会の喧騒を忘れて

数多ある落語家の仕事の中で、ずっと行ってみたかった仕事がある。

「豪華客船」の仕事だ。

都会の喧騒を忘れて、豪華客船でゆったり過ごしながら、夜は落語をはじめ、歌やダンス、邦楽など様々なショーを楽しみ、寄港地で思い出を作り、海を眺めながら美味しい食事を楽しむ。

様々な旅行をし尽くした富裕層の遊び ――

それが豪華客船でのクルージング旅行だ。

その豪華客船のエンターテイメントスタッフとして乗船し

優雅に時を過ごしながら落語を楽しんでいただく。

その憧れの仕事に、芸歴21年にしてやっと携わることができた。

1週間近くも豪華客船で優雅に海外に行くお客様だが、どんな人たちなんだろう?

「ごきげんよう~」
「おほほほほ」
「ごきげん麗しゅうございますわ、奥様~」

みたいな天上人を想像していたが、乗船場所が神戸だったこともあって

ほぼ全員が関西弁だった……。

「あかんわ、もう酔うてきたわ」
「いや、まだ船出てへんやん」
「ちゃうねんちゃうねん、二日酔い」
「なんやそれ~(笑)」

華客船なので、かなりの額を支払っているので、みんな相当なセレブのはずなのだが

関西弁を聞くと、ものすごく庶民感が出るのは、なぜだろう?

改めて関西弁の親しみやすさを実感した。

夢のような時間

そんな中、初日のステージで

「神戸からのご乗船ということですが、垂水出身なんです~」

と言うと、後でお客様から

「うちも垂水なんです~」
「垂水出身です!!」
「去年、垂水に引っ越してきました!!」
「実家が垂水です」
「私、垂水中学校出身です!!」
「元彼が垂水でした!!」

なぜか僕の地元、垂水関係の人がめちゃくちゃ多かった。

過去のエッセイにも書いたが、僕はなぜこんなに垂水を引き寄せてしまうのだろう。

もういっそ、垂水港発着にすれば良いのに……。

まあ垂水はさておき、その航海中、計4ステージの合間は何をしても自由で、食事も食べ放題、お酒も飲み放題で

ステージの時間以外は、乗船しているお客様とほぼ同じ条件で、船内で自由に船旅を過ごして良いのだ。

もちろん、船内のレクリエーションに参加してもいいし、ほかのショータイムを観てもいいという

ものすごく優雅な仕事だ。

未だかつて、こんなに充実した環境があっただろうか?

普段、楽屋にチーズおかきとクリスタルガイザーがあっただけで小躍りするくらい喜ぶ僕にとっては、まさに夢のような環境だ。