虫以下と 答えて後は シカトかな

三遊亭朝橘の「朝橘目線」 第2回

お父さん、抱っこして

 ところが先月くらいから、この平和の象徴とも言える公園が時折、物々しい空気になる。黒く立派なカラスが、これ見よがしに低空飛行し人間たちを威嚇する。そのたびに子どもたちは悲鳴を上げ、大人たちも怖い危ないと井戸端会議を中断して様子を見ることになる。

 この時期のカラスはいわゆる産卵期なので、非常に気が荒い。地方在住の方、大らかで自然豊かな地域でのびのび子育て中の親御さんは「東京の人間はカラスごときに情けない」と思うかもしれない。でも子どもには怖いよ、カラス。正直言って私も怖い。あいつ頭良いし。

 私のビビり気質は、娘にも遺伝してしまったのか、特に長女がものすごく怖がる。どんなに楽しい遊びの最中でも、カラス一羽の登場で「帰る」と涙目で訴えてくる。そして私に抱っこをせがんでくる。私は娘を抱っこしながら(カラスよ、ありがとう)と心の中で呟く。こういうチャンスでしかもう抱っこさせてもらえないお父さんにとって、砂漠のオアシスのようなものである。

 スズメバチというのも非常に怖い。あれはマジでシャレにならない。都内の公園でも【スズメバチ注意】の看板を時折見かける。たった一羽の鳥、一匹の虫で人間様が右往左往するというのは、なんだか情けないが仕方もない。

 開催中の万博が、ユスリカという虫の大量発生でてんやわんやというニュースも最近観た。うん、あれは嫌だ。そしたら今度は、そのユスリカを鳥がバクバク食べているという話も耳にした。人間には阿鼻叫喚でも鳥にはビュッフェスタイルなのか。

 次は何が現れて、鳥を捕食するんだろう。生命の尊さを学べる万博のようである。行けたら行きたい。行かない大人の常套句? いや行けたら行くよ。虫と鳥がいなければね。