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このエッセイをすでに読む必要のない方々へ(2)

柳家小志んの「噺家渡世の余生な噺」 第2回

いつか、どこかで、小さな波紋が広がれば

 だが、そんな中にも1つの救いがある。

 以前、小中学生を対象にした環境問題の作文・絵画コンクールで、講演と落語を依頼されたことがある。講演後、「どうして環境問題に興味を持ったの?」と聞いてみた。返ってきたのは、「授業で先生から教わった」「好きな漫画に出ていたキャラクターが教えてくれた」――そんな言葉たちだった。

 つまりは、身近な者からの突発的に投げかけられた「ひとこと」が、子どもたちの中で何かを芽生えさせたのだ。この連載が、そういう「投げかけ」になればと願っている。

 誰かが誰かに「こんな話があってね」と、ふとした折に口にする。思わぬ形で、届くべき人に届く。そんな小さな波紋が、少しずつ広がっていく。そういう可能性に、わずかでも賭けてみたいのだ。

 結局のところ、このエッセイは、読む必要のない人たちにこそ、きっと響いてしまっている。だが、だからこそ、あなたがその「矢」を別の誰かに手渡してくれたなら、この連載の意味も、少しは生まれるような気がしている。

 静かに、淡々と、哀しみと笑いの間で。これからも、余生で語るような噺をしていきたい。

(毎月14日頃、掲載予定)