2025年6月の最前線【後編】(軍談が今、面白い! ~軍談の意義と再認識、新しい姿)

「講談最前線」 第3回

軍談を巡る魅力の再認識

 そして、「軍談道場」では兄貴分とも言える一龍斎貞橘は、軍談の魅力についてひと言、次のように発する。

 修羅場調という唯一無二、講談ならではの魅力の再認識。

 ここで貞橘が「講談ならではの魅力の再認識」とするように、繰り返しになるが、講談の中軸には、やはり「軍談」があることは間違いない。

 だが琴鶴は一方で、「軍談は大切だと言われるけれど、ほかにも売り物となる演目はあるし、軍談の名手も少なくなってきた現状を考えると危機感はあります」と言う。

 琴凌もまた、「個人としては、今までもそうしてきたように、これからもずっとやっていきたい。軍談はやり手が少ないので、後に続いてほしい。たとえ孤独な戦いになってもやっていきます」と、講談界の先々を心配している。

 しかし、マイナスの要素ばかりではない。上記したように、今、若手講釈師たちが「軍談」の魅力を再認識し、またそうした会に多くの聴き手が集まり、更に今回の津の守ではその企画に乗ってやろう!と言わんばかりに、講談協会会長の宝井琴調や大ベテランの一龍斎貞花が出演する点にも注目しない訳にはいかない。

琴鶴の師であり、ベテランの宝井琴星(左)も出演(宝井琴鶴・提供)

「私の好きな軍談は、『三方ヶ原軍記』。宝井派は基本として刷り込まれ、何をやっても『三方ヶ原』に戻ってきます。壁にぶつかった時に、講談の姿勢を正したい時に読みたい一席です」(琴鶴)
「今、大好きなのは『本能寺』。色々な人が読んできて練られている作品で、長くなくて、まとまっているし、修羅場ももちろん入っているのが魅力です」(琴凌)