牛ほめ、たがや、茶の湯
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第3回
- 落語
林家 はな平
2025/07/06
茶の湯 (画:おかめ家ゆうこ)
落語には、オチ(落ち)がある。噺家は、サゲ(下げ)と言うことが多い。そうしたオチには「秀逸なもの」と「くだらないもの」、そして「説明しないとわからないもの」が存在する。そんなオチを筆者なりに★~★★★で分類し、「あらすじ」「オチ」「解説」の順に説明する(★の分類基準は、連載の第1回をご参照いただきたい)。
今回は、牛ほめ、たがや、茶の湯を解説する(○席目という表記は、第1回目からの通算の数)。
七席目 『牛ほめ』 ★
◆【あらすじ】
馬鹿な与太郎が、佐兵衛おじさんの新築した家の褒め方を父親に教わる。
その文句は「家は総体檜木造り、天井は薩摩の鶉木目(うずらもくめ)、左右の壁は砂摺り(すなずり)で、畳は備後の五分縁(ごぶべり)お庭は総体御影(みかげ)造りでございましょう、床柱は南天で結構でございます」というもの。
ついでに台所の大黒柱に節穴があるから、「これには秋葉様のお札を貼れば穴が隠れて火の用心になります」と言えば小遣いをもらえる。それが駄目なら牛を褒めれば良いという。「天角地眼一黒直頭耳小歯違(てんかくちがんいちこくろくとうじしょうはちごう)」というなんとも呪文みたいな褒め言葉。
さあ、名誉挽回にと与太郎が佐兵衛おじさんの家に試しに行く。ところが、そこは与太郎。「天井はさつまいもにうずら豆、佐兵衛のかかあは引きずりだ、畳は貧乏のぼろぼろで…」とまるで上手くできない。
それでもなんとか台所の節穴を見つけてうまく切り抜けると、最後は牛を褒めようとするが……。
◆【オチ】
いくら褒めても反応のない牛。そのお尻の穴を見つけた与太郎が、
与太郎「おじさん、この穴に秋葉様のお札をお貼りなさい」
佐兵衛「そんなことしたら罰が当たるよ」
与太郎「いやあ、穴が隠れて屁の用心になります」
◆【解説】
本来は、違ったオチだったと聞いたことがある。確かに、与太郎が言うセリフにしてはキザな感じがする。自分から笑いを取りに行っているようにも思える。ともあれ、洒落で終わる簡単なオチだ。
この噺は、とにかく子供にウケる。子供にウケる鉄板ネタランキングをやったら、多分どの噺家も上位に入れるに違いない。
じゃあ、大人にはウケないのかというと、それがちゃんとウケる。ご常連の方は、そうでもないと思うが、地方で落語を聞き慣れないお客様の前だと、大人でも子供でもウケる。
前半に家の褒め方をレクチャーしてもらう場面があって、その文句はほとんどピンと来ないが、どれも語感が良くて妙に耳に残る。それを与太郎が“ラッパーが韻を踏む”ように間違えた文句を並べ立てて、笑いは最高潮に達する。
台所の大黒柱に行くと、噺はラストへ一気に進むが、そもそもこの大黒柱を子供たちは知らないことが多い。今の洋建築には、柱すらないのだ。
こういう昔の風情に浸れるのも落語の良さかもしれない。
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