牛ほめ、 たがや、 茶の湯
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第三回
- 落語
林家 はな平
2025/07/06
八席目 たがや ★★
[ワンポイント]
この噺の主人公は、名もなき町人「たが屋」。舞台は両国の川開きで、花火と人波が渦巻く夜だ。ひょんな不運から侍と揉め、刀を抜くことになる。弱いはずの一般人が権力者に立ち向かう構図が、この噺の最大の魅力であり、爽快感でもある。
◆【あらすじ】
両国の川開きの花火見物で、両国橋は大勢の人でごった返している。花火が上がれば、「玉屋(たーまやー)!」の掛け声が飛ぶ。
そこへ、仕事終わりの「たが屋」が通りかかる。人に押されたり、揉まれたりしているうちに、たまたま通りかかっていた侍の一行にぶつかって、道具箱を落とす。すると、箍(たが)が弾けて、殿様の被る笠を飛ばしてしまう。
たが屋は謝るが、なかなか許してくれない。「斬れるもんなら斬ってみろ」と啖呵を切って居直ったたが屋は、喧嘩に慣れているせいか、家来三人を見事に斬る。
最後に残った殿様が自分の番とばかりに、馬から下りて槍を構える。相手は、馬一頭槍一筋のお旗本。敵うはずがない、たが屋だったが……。
◆【オチ】
見物の後押しに自信をつけたたが屋が、構えた刀をわざとずらす。隙ができたと、「ヤー!」とついて来た殿様の槍を体をかわして避けたたが屋が、槍の先を斬り落とす。
槍の先がないんじゃあ、やりくりの付かない殿様。懐から小刀を取り出そうとするが、それより早く、たが屋が横一文字に斬った。宙天高く上がった殿様の首。見ていた見物が声を揃えて、
見物 「たーがやー!」
◆【解説】
これも本来は、違ったオチだったそうだ。元は、たが屋の首が飛んでしまうオチだったものが、いつからか逆になったようだ。家来を次々に斬るたが屋が最後にやられちゃったら、救いがないのかもしれない。一般人が権力に勝つというところに、この噺の魅力がある。
この演目は、会話よりもナレーションが多い「地噺(じばなし)」という部類に入る。オチの伏線のために「玉屋ー!」の部分を説明することがほとんどで、付随して歌舞伎の掛け声の話を入れる演者が多い。
ところどころ入る「くすぐり(笑いどころ)」も演者によって違う。ナレーションと並行して、たが屋と侍のやりとりや、見物が喋る場面に移ったり、短編映画を見ているような気持ちにもなる。すべては演者の描き方次第ではあるが。
ちなみに、花火屋の歴史としては鍵屋が先にできて、玉屋がその後にできたそうで、玉屋は火事で焼けて廃業して鍵屋だけが残ったが、掛け声はなぜか「たまや」が主流になったという。
鍵屋は、現在も暖簾を守っている。
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