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社会派講談の旗手 神田香織(中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第6回

『お菓子放浪記』 ~少年の夢と戦争の影

香織 私も好きなんですよ。本当はもっと練り込んで、続きも作りたいし、連続で読んでいきたいと思っているのですが、今はまだ前後二作で読んでいます。『ゲン』はあれだけ生々しい作品でしょ。でも一方で、『お菓子放浪記』はお菓子に憧れた少年の気持ちとか、当時の戦争中の庶民の暮らしぶりがよく描かれているんで、この作品はずっとやっていきたいですし、寄席でもかけやすいようにしていきたいですね。

香織 その通りですね。お客さんが聴いて、「なるほど、こういう生き方があるんだ」と感じてもらえれば嬉しいですね。

香織 ありがとうございます。この作品はいつもお菓子に憧れていて、あと半年待てばお菓子が来る。でもお菓子が来たら、誰かに持っていかれてしまう……。旅芸人が登場しますが、主人公の少年が出会った時に、最初は見下していたのに、実は素晴らしい人たちだと気づくんですよね。ところが女形の芸人のところに赤紙が届いて、自ら命を絶ってしまう。聴いている人もシゲル少年と同じ気持ちになってもらいたいですね。