映画館の暗闇で

「コソメキネマ」 第5回

思い出の映画館

 閉館した映画館で思い出深いのは、銀座シネパトスでしょうか。 

 歌舞伎座のすぐ近く、三原橋交差点に地下街があり、昔ながらの居酒屋や定食屋が立ち並び、その一角にシネパトスがありました。2013年に閉館しましたが、今考えると、あの昭和の雰囲気を色濃く残した空間が、銀座に平成の終わる数年前まで存在したのが奇跡のようです。

 シネパトスは三つに分かれていて、多種多様な映画がかかっていました。その一つによく旧作の日本映画がよくかかっていました。自宅から比較的近かったこともあり、映画が観たくなると、自転車を吹っ飛ばして駆け付けました。

 梶芽衣子、川谷拓三特集など面白いラインナップも多く、よく通いました。近くを地下鉄が通っていて、上映中に時々ゴーッという電車の通る音がするのもまた良かった。

 『誘拐報道』を観に来られた伊藤俊也監督がロビーでファンの方から話しかけられ、それに答える形で自然発生的にトークショーのようになったこともありました(通りすがりでしたが、とっても興味深く、面白かった)。

 閉館が決まった時は、シネパトスを舞台にした秋吉久美子さんと染谷将太さん主演で『インターミッション』という映画も作られたほど、愛された映画館でした。今でも「シネパトスがあったらいいのに」と時々思います。

 もう一つ印象に残っているのは、新橋駅のガード下にあった新橋文化劇場という名画座です。二軒並んだ映画館で、隣は新橋ロマン劇場という成人映画の映画館でした。2014年に閉館。新橋文化は洋画専門の名画座でしたが、建物が印象的でした。なんと、スクリーンの両側にトイレがあり、上映中に人が入っていくという……。喫煙所も狭くて、潜水艦みたいで、面白い建物でした。現代では、もうこんな映画館は作られないだろうなぁ。

 二本立てで、二本の映画に何か共通するものが入っているところも好きでした。最後に観たのは『タクシードライバー』と『デス・プルーフinグラインドハウス』。共通するのは“車”でしょうか。

在りし日の新橋文化劇場