9/3は、睡眠の日 →電車で寝過ごしてしまった男の恥辱

「エッセイ的な何か」 第4回

最高のファンタジー

 何もこれは、早寝早起きになってからの酒癖ではなく、もともと飲酒が過度になると急激に眠くなってしまうタチなのだ。なので、酔って電車を寝過ごすこともしばしば。現に一昨日も寝過ごしてしまった。

 まあ、四季に通じて寝過ごしてはいるが、一番危険なのは冬。何故かと言うと、座席の足元、ふくらはぎの辺りに強烈な温風が吹き付け、その風と共に睡魔が乗ってくるのだ。多分、ふくらはぎを温めると、人は眠くなる。故に、冬の飲酒時は空いていても座席に座らないようにしている。行き先も寝過ごした時のためになるべく近場の電車を選ぶ。

 ……まあ、乗車時にそこまできっちり考えが及んでいる状態なら、大して酔っ払ってもいないだろうし、そもそも寝過ごしたりなどしないのだが。

 今までで一番サスペンスな乗り過ごしだったのは、前座の最末期。二ツ目昇進も決まり、御祝の着物を拵えてくださる方がおり、その打ち合わせで松戸へ。「おめでとう!お祝いだ!」とドンと出された一升瓶数本。お祝いだと言われちゃあ、断る訳にもいかぬ。散々呑んだはずだが、全く覚えていない。

 覚えているのは、松戸駅まで送ってもらい、上野行きという表示の電車に乗って「これで一安心!」というワンシーンのみ。その当時、上野に住んでいたのだ。

 ……さあ、そこから全く記憶がない。目が覚めると朝になっていた。

 見覚えのない駅のホームで目覚め、駅名表示板を見ると『大津港』。何処だよ!? 良く良く見ると、福島県。気がつけば福島の全く知らない港町の駅に居る。もうファンタジーである。

 推察になるが、その当時は、常磐線で大津港駅まで直通で折り返し運転をしている電車が存在した。恐らく上野行きの常磐線に乗り込み、寝入った状態で上野に到着。そのまま大津港への折り返しとなり、そこで降ろされたのであろう。