VR落語での目標

古今亭佑輔とメタバースの世界 第4回

VR落語での目標

若い世代を魅了する新感覚落語は日々、進化を続ける

古今亭 佑輔

執筆者

古今亭 佑輔

執筆者プロフィール

VR落語でやりたかったこと

 自分はVR(Virtual Reality:仮想現実)を始めた時から、ずっとやりたかったことがある。

 それは、VRならではのギミック(仕掛け)を駆使して、客席と一体型の落語公演を行うことである。VRでは空を飛んだり、瞬間移動をしたり、現実ではありえないことが出来る。

 その利点を活かして、現実では決して行うことの出来ない新感覚落語を若者に楽しんでもらいたい。そしてそれが、若者が落語を知るきっかけとなれば良いと考えていた。

 まず初めに、その公演を行うためにクリエイターを見つけなければならなかった。自分ではパフォーマンスは行えてもギミックを組み込んだり、技術的なことは出来ないからだ。

 しばらくVR上で様々なイベントに参加し、色々と人を頼り、目標の実現のために力を貸してくれる人物を探した。

 そこで、パーティクルライブ(光や煙など、視覚表現を組み込んだ音楽ライブ)を行うBさんに出会った。パーティクルライブを行う人の中には、自身で歌ったり踊ったりする人も存在する。何度かライブを拝見したが、Bさんの物語性のあるライブ演出はとても魅力的だった。それに、落語にも近いものを感じた。

 Bさんにお願いをして、まずは試作段階として古典落語「死神」の演出を作ってもらった。演じるのはもちろん自分だ。

 真っ暗な穴ぐらを降りてゆくと、そこには何千、何万もの蝋燭(ろうそく)が。

 蝋燭を吹き消した時に、強制的に参加者の視覚を真っ暗にする。視覚的な表現も相まって、臨場感のある高座を作ることが出来、評判もとても良かった。

 手応えを掴んだ自分は、さらなる目標の実現のため、動き出すことにした。そこから後日お願いをして、BさんにもVRC落語会(定期的に開催するVRでの落語会)のメンバーに加わって頂く。