優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第20回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/11/30
田辺一邑 近影(墨亭にて)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。〈田辺一邑(たなべいちゆう)先生の前編/中編/後編のうちの後編〉
新作講談作りの醍醐味
――ご出身の浜松の有名人物を扱った作品もあります。
一邑 最初に作ったのが『山葉寅楠(やまはとらくす)オルガンを直す』で、その次が『フジヤマのトビウオ 古橋廣之進(ふるはしひろのしん)』でした。他にも『高柳健次郎(たかやなぎけんじろう)』『白井鐵造(しらいてつぞう)』『田畑政治(たばたまさじ)』『井伊直虎(いいなおとら)』『金原明善(きんぱらめいぜん)』など。作ってもこれは割と良くできたなと思うものもありますし、ダメだと一回きりというものもあります。
――先生の新作講談を聴いていると、題材の掘り下げ方とか組み立て方からして、いい資料を見つけるのが得意なのではと感じることがあります。
一邑 資料を見つけるのは割りと得意なんです(笑)。作家のようにゼロから作り上げていく力はないので、方向性を決められるいい資料が見つかるかどうかが鍵です。子ども向きの本がとても参考になります。師匠もよくそう言っていました。最近は国会図書館のデジタルライブラリーが便利なので助かっています。ところが以前は目次をクリックすると見出しがすべて表示されてそこに飛ぶことができたのに、最近は「目次」しか出なくなったのが不便で、この間もそのことをアンケートに書きました(笑)。
――最近、作った作品は何かありますか。
一邑 この間、世界お茶まつりの開会式でお茶講談『日本茶を世界へ』と、ここ何年か毎年呼んでくださる新城市で長篠合戦のクライマックス『決戦!設楽ヶ原(したらがはら)』を下ろしたばかりです。聞き手は地元の方が主なので、できるだけわかりやすく、ですがそこは講談ですから修羅場も入れて、そのへんの加減がミソですね。
――来年2026年の大河ドラマは「豊臣兄弟!」なので、秀吉が登場する話は、今のうちから用意しておくのも得策ですね。
弟子の活躍
――ご一門もご活躍されています。来年は、(田辺)いちかさんが真打に昇進されます。
一邑 一門と言っても、一乃(かずの)と凌鶴(りょうかく)の二人は師匠が亡くなってからの預かりですし、もう真打なので別格です。いちか君ももはや私の手からは離れているので、あとは身体だけは気をつけてほしい。この仕事は身体が資本ですから。高座に関しての心配はありません。会も沢山開いていますし、秘かに逆七光りを狙っています(笑)。その時に師匠として恥ずかしくないよう精進します。
――弟子の七光りですね(笑)。一記(かずき)さんも面白い読み物を読んだりしています。
一邑 一記君は我が道を行くタイプで、マイペース過ぎるのがちょっと心配なんです。もう少し、欲を出して、会を開いたほうがいいと思っています。欲がなさすぎる。どうか応援してあげてください。
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