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秋白し

「まだ名人になりたい」 第5回

秋白し

発情期の鹿を風物詩にしたい(画:柳家さん花)

柳家 さん花

執筆者

柳家 さん花

執筆者プロフィール

馬鹿にはわからない季節?

 私は、秋がわかりません。

 花鳥風月を感じる心がありません。日本には四季がありますが、どの季節でもハンバーガーは美味しいのです。

 秋の風物詩は、どれも取るに足らないです。たとえば、紅葉です。

 葉が変色していくのは良いです。こっちも期待します。これからどうなるのだろう。しゃべりだすのかな? 一つにまとまって空の彼方に飛んでくのかな? 楽しみだなあ!

 ―― 結果、散るだけ。あれだけ大風呂敷を広げて期待させといて、散るだけ。なぜみんな怒らないのか不思議でなりません。出来ればこれからは、紅葉しないでほしいです。

 夏は暑い。
 冬は寒い。
 春は幸せ。
 秋は何?

 秋は、「ほかの季節と違う深みがある。馬鹿にはわからないよ」という顔をしていますが、本当でしょうか? ちなみに、私の春に幸せなどありません。

 私の見立てでは、何もないけど恥ずかしいから「深み」と言っているだけじゃないのか!

 秋を連想させるものは、数だけ多いです。わかりやすいくらい、質より量です。私にとっての秋は、以下の通りです。

 食欲の秋、ご飯はいつでも美味しいです。
 読書の秋、字を読むので精一杯で内容を理解できません。
 スポーツの秋、歳のせいか何もしてないのに身体の調子が悪いです。
 芸術の秋、作品の感じ方は季節よりその人のタイミングによります。

 夏の海や冬の雪くらい刺激が強く、ほかの要素の影響を受けない風物詩がほしいです。このままでは私だけでなく日本人が皆、秋を素通りして、いずれ忘れてしまいます。

 何だか心配だ。秋を救いたい。