自分らしく、まっすぐに 神田菫花(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第17回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/10/29
墨亭での近影
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。(神田菫花先生の前編/中編/後編のうちの後編)
ストイックなまでのこだわり
――ところで、今、干瓢以外に、何か趣味はお持ちですか?
菫花 今はありません。日々、細かで雑多なことに追われていて、それで手一杯です。強いて言えば、量を計ることでしょうか。定量にするということにこだわりを持っていて、それを一生懸命にやっています。
――それは、何か食べたりするものの量をキッチリ計るということですか。
菫花 ええ。コロナの間、ボディビルの映像を見るのにハマっていて、やってみたいなと思ったんです。ですが、食事制限をして食べる物や食べ方にも計画的に取り組んでこそ、あの体ができる訳で、ならば食べ物を計ることからやってみようと、お米であれば108gに150gと決めて、108gって煩悩の数ですが、5年間ずっとやっています。鶏もむね肉を食べて、たんぱく質を摂るようにして、自分で自分を律して作るトレーニーのような食事をしています。
――肝心の筋トレは?
菫花 脱落して、やめてしまいました(笑)。だから計るところだけ継続しています。
――他に量のこだわりは?
菫花 漬け物を作る時に、大根と生姜は塩の濃度を2.7%、鶏むね肉は1%と計っています。自分だけのこだわりですね。
神田菫花、講談に関してストイックな面を持ち合わせているが、日々の生活もまたストイックなのである(笑)。そんな菫花が11月に所属する講談協会の定席で、企画を手掛けた。恩師の一人である神田翠月も得意にして読んだ『お富与三郎』の車読みである。その企画意図について尋ねてみた。
――今回、11月の津の守講談会で『お富与三郎』の車読み(リレー講談)を企画されました。これまでに見られなかった面白い番組ですが、企画した理由を教えてください。
菫花 顔付け担当の田辺鶴英(たなべかくえい)先生から、津の守講談会で3日間トリを取ってほしいと言われて11月にお受けしました。でも、トリを取るということは、他の協会の先生の力も必要になりますし、折角であれば何か企画ができないかな、車読みがいいなあと思ったんです。
時期的に怪談でもないし、義士伝でもない。それでいて、比較的みなさんが手掛けていて、聴きに来てくださるお客様が知っている話。読み手が多くて面白い話がないかなあと考えていたら、「そうだ!『お富与三郎』がある」って、少々打算的に決めました(笑)。
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