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自分らしく、まっすぐに 神田菫花(後編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第16回

女性講釈師で紡ぐ『お富与三郎」の車読み

菫花 私は序盤しか読まないんですが、今回『茣蓙松(ござまつ)』に取り組みます。自分で台本を作らなければいけないなと思っていたのに、田辺一邑(たなべいちゆう)先生が書き下ろしてくださって、出演していただける上に台本まで頂戴して、感謝してもしきれません。

 実は初めて一邑先生の与三郎殺しを聴いた時、あんな色っぽく人を危めるんだ。あれは騙されるなと思いながら、肝心の場面では私がやられるんではないかと思うくらいでした(笑)。そう考えると一邑先生に読んでもらいたかったための企画とも言えます。

 一龍斎貞寿(いちりゅうさいていじゅ)姉さんは全段読まれますが、だからと言って、その全部がいつも読める訳でもありませんし、今回は『親子別れ』の場をお願いしたところ、二つ返事で協力してくださいました。世間知らずの主人公が揉まれ揉まれて、親の気持ちがやっとわかって来る。悪いことを積み重ねてきたのに、この場でやっと立ち直ることができる。主人公の与三郎の人生にも色々あるなと感じていただける場です。今回は有名な場の他に、あまり読まれることのない後半も聴けるので贅沢な会です。

菫花 一生に一回ぐらいは『お富与三郎』という話を通しで聴いていただきたい。あとで振り返ってみた時に、あの時に聞いてよかったなと、きっと思っていただけると思いますので、ぜひ、ご来場ください!

真打昇進時、幟を前に(菫花・提供)