NEW

〈書評〉 パズルと天気 (伊坂幸太郎 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第5回

軽さの向こうにあるもの

 誰かにおすすめするなら『Weather』だが、個人的には『竹やぶバーニング』が好き。

 酒屋兼探偵業を営む松本は、株式会社青竹ファームの社長から「出荷した竹の中に異物混入した、その異物を見つけてほしい」という奇妙な依頼を受け、仙台の七夕まつりへとやってくる。竹の中の異物を見つける切り札として連れてきたのは友人でホストの竹沢不比人(たけざわふひと)。不比人の持つ能力を頼りに異物捜索が開始することとなるが……。

 日常の中に突如訪れる非日常な1日。ファンタジーな設定ながら、読み進めるにつれてどんどん話に引き込まれる。個人的にラストの軽さがすごく好きだった。本当にいい意味で心に残らない軽さが好き。

 『イヌゲンソーゴ』もファンタジーな設定から、息つく暇もない復讐劇へと展開していく。「辻褄が合わないとか野暮なことを言う奴はお断り!」というくらい超ファンタジーなので、もはや細かいことなんて気にならない。

 また物語のスピード感が凄い。登場人物どいつもこいつも目ん玉血走ってる状態なので、「辻褄が……」なんて野暮なことを言うと、こっちが噛みつかれそうでそんな気にならない。黙ってこの世界を受け入れるしかない。

 巻末に各短編についてのあとがきがあり、伊坂幸太郎さんが執筆に至る経緯などを綴っていてこれがまた面白かった。特に『イヌゲンソーゴ』のきっかけは面白い。『こんな奇想天外な話はこうやって生まれたのか……。』と、知ることができるのは新作落語を作る私にとっても勉強にもなる。

 小説家の先生方もテーマやお題を与えられて物語を作るのかと、読書ビギナーの私にはとても新鮮だった。