きゃいのう、崇徳院、ぞろぞろ
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第7回
- 落語
林家 はな平
2025/11/06
二十一席目 『ぞろぞろ』 ★★★
◆【あらすじ】
稲荷神社の門前で荒物屋(あらものや)を営む老夫婦。何日も客が来ず、店にあるのは天井に吊るした草鞋(ぞうり)が一足だけ。店主のお爺さんが繁盛祈願で、お稲荷様へ御神酒(おみき)を供えてお詣りをする。
しばらくすると、雨が降り出してきて、客がやって来て地面がぬかるんでいるから草鞋をほしいと言う。喜んで草鞋を売る、老夫婦。
また客がやってきて草鞋をほしがる。「いま売り切れたばかり」と断るが、客は「何を言ってんだ、天井に一足ぶら下がってるぜ」と天井を見ると確かに一足ある。不思議に思ったが、その草鞋を売る。
その客を見送って、天井へ目を移すと、何もない天井から新しい草鞋が「ぞろぞろ」と出てきた。これはご利益だと、喜ぶ老夫婦のもとへ客が次から次に訪れて繁盛する。
これを見ていた向かいの床屋の主人、同じく繁盛していない。自分の店も客が「ぞろぞろ」来るようにと、お稲荷様へ御神酒を持ってお参りに行く。
主人が店に戻ると、客がたくさん押し寄せていた…
◆【オチ】
床屋の主人は、ご利益だと喜んで最初の客のヒゲを剃る。
すると、新しいヒゲが「ぞろぞろ」。

◆【解説】
オチのための落語で、緊張と緩和の意味でも秀逸なオチである。もちろん知っていれば、なんてことはないオチだが、初めて聴く人には特にインパクトの強いオチである。
草鞋やヒゲが生えてくる音が「ぞろぞろ」なのも良い。「ぼー」でも「ざざざ」でも「にょろー」でもダメでやっぱり「ぞろぞろ」がいい。考えた人に拍手を送りたい。
あらすじに書いてあるように、ほとんどの場合は老夫婦が主人公になっている。筆者は、父と娘の親子の形で口演するが、展開としては同じである。
「神信心(かみしんじん)をすると良いことがある」というのは誰もが信じていることだが、本当にみんなにご利益があるわけではない。鶯谷の近くに有名な小野照崎神社(おのてるさきじんじゃ)という芸事の神様を祀った神社がある。かの渥美清がお参りして、寅さんの主役に抜擢されたことで有名になり、数多くの芸人が訪れることで知られる。
筆者もその一人だが、まだ大きなご利益を頂いていない。おそらく小野照様も私のようなものばかりが参拝に来て、呆れているのかもしれない。
早く私の独演会にもお客様が「ぞろぞろ」来てほしい……。
▼林家はな平 公式Webサイト
(毎月6日頃、掲載予定)
前回(第6回)はこちら
―― 林家はな平『オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?』シリーズ連載一覧
いま読まれています!
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様の香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「べべログ」 第3回
グリル梵の「ヘレカツカレー煮込み」(大阪市浪速区)
~20年越しの味と笑い。蘇るあの日の記憶
笑福亭 べ瓶
2025/11/21
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第4回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/27
「エッセイ的な何か」 第6回
11月7日は鍋の日 →高級食材を食いまくった男の疑問
~なぜ高額なアンコウ鍋が食べ放題だったんだろう?
三笑亭 夢丸
2025/11/19
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
「すずめのさえずり」 第一回
エッセイについて
~待望の連載がスタート!
古今亭 志ん雀
2025/07/26
「ラルテの、てんてこ舞い」 第1回
悩ましい食の話と、桂雀々エピソード1
~桂雀々師匠と二羽のカラスの物語
ラルテ
2025/06/29
月刊「シン・道楽亭コラム」 第3回
小さな演芸場、大きな縁 ~シン・道楽亭、再始動の一年
~還暦を過ぎて見つけた「宝物」
シン・道楽亭
2025/07/10
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様の香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「べべログ」 第3回
グリル梵の「ヘレカツカレー煮込み」(大阪市浪速区)
~20年越しの味と笑い。蘇るあの日の記憶
笑福亭 べ瓶
2025/11/21
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第4回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/27
「エッセイ的な何か」 第6回
11月7日は鍋の日 →高級食材を食いまくった男の疑問
~なぜ高額なアンコウ鍋が食べ放題だったんだろう?
三笑亭 夢丸
2025/11/19
「マクラになるかも知れない話」 第三回
となりは鼻うがいをする人ぞ
~ねぇママ、パパは何をしているの?
三遊亭 萬都
2025/10/22
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
「講談最前線」 第10回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「ラルテの、てんてこ舞い」 第1回
悩ましい食の話と、桂雀々エピソード1
~桂雀々師匠と二羽のカラスの物語
ラルテ
2025/06/29
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
「講談最前線」 第10回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
「くだらな観音菩薩」 第7回
目青不動
~人の縁に感謝。ありがとうございます
林家 きく麿
2025/11/16
「浪曲案内 連続読み」 第7回
レッサーパンダの風太くんは、パン間国宝!
~日本中が沸いた風太くんの生き様が浪曲に!
東家 一太郎
2025/11/15
「エッセイ的な何か」 第6回
11月7日は鍋の日 →高級食材を食いまくった男の疑問
~なぜ高額なアンコウ鍋が食べ放題だったんだろう?
三笑亭 夢丸
2025/11/19
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様の香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第7回
〈書評〉 若手だった師匠たち 年間1000席の寄席通いノートから(寺脇研 著)
~「忘れ去られるはずの瞬間」が浮かび上がる貴重な論集
杉江 松恋
2025/11/19
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第7回
ビールの秋、日本酒の秋、わたしの美が深まる秋
~浪曲師の日記が、ここまで笑えていいんですか!
東家 千春
2025/11/03
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第4回
上方落語大会議「なんぼでなんぼ」
~苛酷な仕事、ギャラなんぼやったら行く?
桂 三四郎
2025/10/24
「マクラになるかも知れない話」 第三回
となりは鼻うがいをする人ぞ
~ねぇママ、パパは何をしているの?
三遊亭 萬都
2025/10/22
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
入船亭扇太の「お恐れながら申し上げます」 第3回
番頭色々
~「本当にやって良かった」 に感謝を込めて
入船亭 扇太
2025/11/11
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
古今亭佑輔とメタバースの世界 第5回
現実世界との相互作用
~VRで広がる落語の可能性
古今亭 佑輔
2025/11/05
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第4回
上方落語大会議「なんぼでなんぼ」
~苛酷な仕事、ギャラなんぼやったら行く?
桂 三四郎
2025/10/24
「マクラになるかも知れない話」 第三回
となりは鼻うがいをする人ぞ
~ねぇママ、パパは何をしているの?
三遊亭 萬都
2025/10/22
「エッセイ的な何か」 第5回
10/9は、アメリカンドッグの日 →兄さんに呼び出された男の困惑
~その男は『ドッグ』と呼ばれた!
三笑亭 夢丸
2025/10/21
「かけはしのしゅんのはなし」 第5回
スポーツの秋! 落語家がサーフパンツで舞台に立つ日
~筋肉は裏切らないが、笑いはたまに裏切る?
春風亭 かけ橋
2025/10/18
「くだらな観音菩薩」 第6回
鑑真和上
~そう、諦めちゃあいけないんだ
林家 きく麿
2025/10/16
「令和らくご改造計画」
第三話 「内輪ノリ」
~またも前座が楽屋を混乱に陥れる!
三遊亭 ごはんつぶ
2025/10/12
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第6回
ビール飲み干し、そしてわたしに秋が来る
~時にヒリヒリ、時に爆笑の舞台裏!
東家 千春
2025/10/03