日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第22回

「あれは講談じゃない」と言われ

―― 兄弟子にもそんな人がいました(笑)

 古典には向いていないので、他の人がやらないネタをと思って、師匠も不思議な話や民話に童話を教えてくれました。

―― 例えばどんな話ですか。

 『きつね討ちおさい』とか、『へびおんな』とか。原作がある話ですが。

―― 聴いたことがないので、ぜひ、聴いてみたい! 円丈師匠からは何かアドバイスとかはもらえましたか。

 全く認めてくれませんでした。ウケるのがわからないって。女性がやるネタが好きでなかったのかも知れません。講談の寄席では「あれは講談じゃない」と言われるし、だからと言って落語でもないし……。新作を始めて30年経ちますが、居場所がない状態で来ています。

―― 私はその頃、茜さんの追っかけみたいに、チラシ等で名前を見かけると聴きに行っていました。国立劇場演芸場の会にも行きました。『小さな恋のメロンディ』とか『ふとももムチムチ』とか『でもね』とか、日常の中に見えてくる、ちょっと「あれ?」と思うような、関係のない人には興味を覚えてはもらえないかもしれないけれど、主人公のそんな日常を決して重くなく、言葉も鮮やかに読んでいく。まるで向田邦子の小説を読むような感じで聴いていました。

 私も向田邦子さんは大好きです。この10年くらいはお客さんが入れ替わってきた感じで、講談のお客さんも変わってきました。初めて講談を聴きにきた人が色物を見るように笑ってくれて、寄席に出ても、今は(蝶花楼)桃花さんが企画する女性ばかりの寄席に出ると、普通に女の人が笑ってくれるのは嬉しいですね。

独演会のパンフレット(墨亭・提供)

 ここに登場する神田茜による新作のあらすじを簡単に紹介すると、思春期の甘酸っぱい恋を会社の上司で追体験しようと妄想するOLを描いたのが『小さな恋のメロンディ』。女優を目指して上京した、ふとももが太い女性が銀座のクラブで右往左往する『ふとももムチムチ』。口下手な女性が霊界にいる祖父から、ある言葉を伝授される『でもね』。

 この後に登場する『あの頃の夢』は、いわば茜版『芝浜』で、不景気でボーナスの代わりに支給された宝くじが一等二億円に当選していることを知った富永さんが妻にそのことを報告すると、有頂天になって使い道を細かく決めてしまう。ところが翌日、妻が宝くじを洗濯してボロボロにしてしまうと告白する……と、茜の新作は常に等身大とも言える女性の姿や恋愛模様、そして人間関係を読み描いている。