昭和101年に寄せて ~落語は新しい!!

月刊「シン・道楽亭コラム」 第9回

落語を未来へ手渡す人々

 古典落語の名人、三遊亭圓生師匠の弟子、円丈師匠が生んだ新作落語も、昭和から平成を経て令和の今へと受け継がれています。

 円丈師匠の高弟、三遊亭白鳥師匠の新作は、今や落語家のみならず、講談・浪曲でも大人気。荒唐無稽に見える噺やファンタジー度高めの噺も多くありますが、実は古典演目をしっかり読み込んでいるからこそ描ける世界。演芸ファンの間では“現代の圓朝”だと尊ばれていますが、私もそう思っています。

 柳家三三師匠が白鳥師匠が作られた『任侠流れの豚次伝』の全編通し公演(2022年11月)をしたことは、古典派が新作派をリスペクトした一例だと思います。

 柳家喬太郎師匠の『布哇の雪』は、古典ベースの元に生まれた名作だと思います。古典本格派の一方で、ウルトラマンシリーズからサラリーマンもの、銭湯からコロッケそばまで、どのファン層にも響く守備範囲の広さは空前絶後です。

 林家きく麿師匠の新作は、『子別れ』を凌駕すると思われる、多数の現代版人情噺です。たとえば『スナック・ヒヤシンス』の連作や、『おもち』『歯ンデレラ』などの老人視点から世の中を見る噺は身につまされつつも、爆笑。子供を描いても切なさで胸いっぱいになるのに爆笑。

 柳亭こみち師匠の「女性目線噺」は、名作古典落語の精神をそのままに、今後「新しい古典」になるであろうと考えます。『死神婆』『女版・あくび指南』『らくだの女』など、女性噺のパイオニア。稽古をつけてもらいたい女性落語家が続々とおいででは、と想像します。

 これら真打の先輩方が耕した畑から若手の新作派も続々と芽を出し、先のNHK落語新人大賞番組内でも、桂米輝さんの意表を突いた『シックスパック』、一位と同点で、決選投票で敗退した笑福亭笑利さんの『苦節20年』が新作でした。また立川かしめさんの『饅頭こわい』は彼らしい改作でした。

 NHK新人落語大賞・優勝者の春風亭一花さんの自作新作の会が、11月30日に座・高円寺2で開催されました。「一花絵巻げんじものがたり」通し公演は、源氏物語(超レトロ!)を現代に翻案した自作で圧倒されましたが、これもまさに諸先輩が耕し続けた芸の畑に咲いた“一花”でした。

 忘れてはならないのが、人間国宝の五街道雲助師匠の「仕事」です。

 演者として素晴らしいのはもちろんですが、過去にあった珍しい(余人がやらないでおいた)演題速記掘り起こしや、続き物口演の功績も忘れてはならないと思います。『双蝶々』『やんま久次』『つづら』『名人長二』など、ご本人が掛けるほか、一門の弟子や柳家三三師匠が継承し、灯は消えずに済んでいます。

 三遊亭圓朝師匠が演者兼作者であったこと、桂米朝師匠が演者兼学者研究者であったことを想起するまでもなく、現国宝も根源に息吹を与えて現代から未来へと落語を手渡す伝道者であります。