三味線と 浪曲唸って 二刀流 弾く手あまたな 伊丹秀敏

「浪曲案内 連続読み」 第9回

名人の三味線に育てられ

 その日からずっと秀敏師匠に可愛がっていただいた。

 当時の浦太郎一門の稽古場所は、秀敏師匠が住んでいる亀有にあった「島」というバレエスタジオや、知り合いの居酒屋、松戸の公民館。名人の三味線で最初から教えていただけたのは何より幸運だった。自分に合った三味線の調子(キー)、浪曲の節の間(ま)という一番肝心なものを、名人二人から肌を通して伝えていただける大切な時間だった。

 師匠浦太郎の後見で、色々な寄席やホールで二人の名演を実に沢山見ることができた。私にとって貴重な財産だ。

 私が新しい演目を覚える時は、必ず秀敏師匠に松戸のカラオケマックで稽古していただいた。想い出が詰まった場所だ。

 そして秀敏師匠に一番感謝申し上げたいのは、東家美を曲師に育ててくださったこと。「私が日本一の曲師にしてみせるから」とおっしゃって、愛弟子にしてくださった。お兄様の伊丹秀夫師匠もご紹介くださり、三味線をご指導いただけた。

 2016年(平成28年)には、「愛の会」という勉強会で、秀敏師匠にゲストに出ていただいて、「男の花道」を演っていただいた。私は「暁の唄」を秀敏師匠と美の二挺三味線で弾いていただいた。

 東武練馬の三凱亭(みよしてい)での努力会にも何度もゲスト出演していただき、席亭にもお客様にもとても喜んでいただけた。秀敏師匠は「今度はいつやるの?」といつも訊いてくださった。

 木馬亭での「いちかい」では、美と二挺で2回弾いてくださって、2018年(平成30年)の「浪曲の明日」公演で「野狐三次~木ッ端売り」、秀敏師匠のお力もあって文化庁芸術祭新人賞をいただくことができた。

 昔から秀敏師匠が弾けば、芸術祭を受賞できると言われていたそう。これはジンクスではなく腕。「三次の木ッ端売り」は秀敏師匠が好きなネタで、少年三次がドブ板を踏んで長屋の奥へ医者を連れて行くという場面から、「ドブ板を踏んでいくやつでしょ」といつも喜んでいらした。

 美に相三味線として弾いてもらうようになってから、秀敏師匠に舞台で弾いていただく機会は少なかったが、最後に弾いていただいたのは、2023年日本橋公会堂での「豪華浪曲大会」で、演目は「桃源の風雲児~桃中軒雲右衛門」。

 「秀敏師匠に浪曲大会で弾いてもらえる機会はもうないかもしれないから、弾いてもらえば」と美が言ってくれた。本当に弾いてもらっておいて良かった。雲右衛門先生と妻の曲師お浜さんの話。浪曲師と曲師、相三味線のことを描いた浪曲を、秀敏師匠の三味線で大きな舞台でできて幸せだった。

 浪曲の中で「お前さんは本当に名人だねぇ」というセリフがあるのだが、そのまま秀敏師匠への想いだ。