三味線と 浪曲唸って 二刀流 弾く手あまたな 伊丹秀敏
「浪曲案内 連続読み」 第9回
- 浪曲
東家 一太郎
2026/01/23
伝説の曲師との出会い
あと10年はご一緒できると思っていた。
「私が一太郎さんくらいの歳だったらねぇ」と、よく言われた。全盛の時代に浪曲の世界に入って、ずっと第一線で三味線を弾いて来て、90歳になって、これからまた何十年も浪曲をやるつもりなんだ!と空恐ろしくなった。私より長生きしそう、と思った。
だから秀敏師匠が亡くなることはないと思っていた。
秀敏師匠は、80歳を過ぎてからも、浪曲師として「暁の唄」「石童丸」「悲恋静」と新しい演目を覚えた。舞台でネタが飛んだことは一度もなかった。
「耳が遠くなったら三味線は辞める」と昔から言っていたが、少しも耳が衰えることはなく、逝ってしまった。芸人としてあまりに見事、完璧な最期だ。格好良すぎる。
だが、もっと会いたかった。

秀敏師匠との出会いは、私の師匠、二代目 東家浦太郎のNHK『日本の話芸』のDVD、「王将一代」の三味線の音色だった。
私は、2007年(平成19年)に師匠に入門したが、その4年前くらいから木馬亭に通って、浦太郎の浪曲を聴いていた。その当時、秀敏師匠は木馬亭をお休みされていたので、生でその三味線を聴いたことはなかったのだ。
このDVDの「王将一代」を観たのは、ちょうど弟子入りする前後だったと思うが、何より三味線にびっくりした。最後のバラシという節が今までに聴いたことがない音色だった。二挺三味線、つまり曲師二人で弾いているのかと思った。また身体にズンッと響いてくるその音に、エレキ三味線なのかな、とも思った。そして東家浦太郎の浪曲が、木馬亭で聴いた時と全然違った。三味線の力でこんなに芸が変わるものかと驚いた。水を得た魚のように、師匠の浪曲が輝いている。
伊丹秀敏。この曲師が、太田英夫改め、二代目 東家浦太郎の相三味線であることを、この時、初めて知った。それから私はこの「王将一代」を狂ったように観返した。

その後、入門してから初めて師匠浦太郎の舞台の後見(手伝い)をしたのが、白金寄席という地域寄席。駅の改札で待ち合わせていた時、三味線の入った三つ折りケースを持って、颯爽と現れたのが伊丹秀敏師匠だった。今でも目に焼き付いている。憧れの人と初めて会った。
師匠浦太郎は、一回目の脳梗塞からすぐに復帰して最初の舞台。秀敏師匠に弾いてもらうのも久々だったようだが、なんとここであの「王将一代」を演ったのだ。大阪の将棋指し、坂田三吉と妻の小春の物語。初めて生で見る、東家浦太郎と伊丹秀敏の名コンビ。弟子入りしてから初めて観る師匠の浪曲と秀敏師匠の三味線。初めての後見という緊張。
狭い舞台袖で正座して、涙を流しながら、「この一瞬一瞬を目に耳に焼き付けるぞ」と自分に言い聞かせたのを覚えている。
いま読まれています!
「コソメキネマ」 第十四回
火曜日の提灯
~浪曲を軸に、移民社会の混沌と愛憎を描く映画『カポネ大いに泣く』をご紹介
港家 小そめ
2026/06/22
シリーズ「思い出の味」 第13回
二つの乳に育てられし
~木綿豆腐に、絹ごし豆腐、豆乳、絹揚げ、おからの炊いたん!
月亭 天使
2025/10/15
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第14回
〈書評〉 新宿末広亭 令和の定点観測 (長井好弘 著)
~笑いとともに、芸人の日常と変化、寄席の温かさを描く貴重な記録本
杉江 松恋
2026/06/20
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第15回
自分らしく、まっすぐに 神田菫花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/10/28
「エッセイ的な何か」 第13回
6月26日は、露天風呂の日 →全裸のおじさんに囲まれた“おじさん”を見つめる男の苦笑
~湯けむりの向こうに、シュールな光景があった
三笑亭 夢丸
2026/06/24
「くだらな観音菩薩」 第14回
烏瑟沙摩明王(うすさまみょうおう)
~叱るより先に、話を聞いてあげたい
林家 きく麿
2026/06/16
シリーズ「思い出の味」 第11回
食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶
~焼肉は落語
桂 笑金
2025/08/17
「座布団の片隅から」 第13回
声優
~話題の人気アニメ『あかね噺』で声優デビューさせていただきました!
三遊亭 好二郎
2026/05/07
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第16回
自分らしく、まっすぐに 神田菫花(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/10/29
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第24回
講談界を駆ける一鶴イズムの継承者 田辺銀冶(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/02/03
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第14回
〈書評〉 新宿末広亭 令和の定点観測 (長井好弘 著)
~笑いとともに、芸人の日常と変化、寄席の温かさを描く貴重な記録本
杉江 松恋
2026/06/20
「コソメキネマ」 第十四回
火曜日の提灯
~浪曲を軸に、移民社会の混沌と愛憎を描く映画『カポネ大いに泣く』をご紹介
港家 小そめ
2026/06/22
「二藍の文箱」 第3回
前座見習に師匠見習
~今年の春、弟子を取った
三遊亭 司
2025/08/02
「浪曲案内 連続読み」 第12回
みちのくツバメ旅
~岩手の地で咲いた、ご縁の花。笑って泣いて感謝する、旅の物語
東家 一太郎
2026/06/18
「くだらな観音菩薩」 第14回
烏瑟沙摩明王(うすさまみょうおう)
~叱るより先に、話を聞いてあげたい
林家 きく麿
2026/06/16
「講談最前線」 第20回
2026年6月の最前線 【前編】 (年季明け! 旭堂左燕インタビュー)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/06/15
「講談最前線」 第21回
2026年6月の最前線 【後編】 (聴講記:名古屋・大須演芸場定席 / 講談『太閤記』小考③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/06/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第24回
講談界を駆ける一鶴イズムの継承者 田辺銀冶(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/02/03
「艶やかな不安の光沢」 第3回
とめどない嘘のつくろい
~人はなぜ物語を作るのか。その答えが、夏の暖簾の向こうにある
林家 彦三
2026/06/12
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第38回
新しい響きを持つ講談への挑戦 神田おりびあ(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/05/30
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第14回
ウケるごとに極まっていくその美貌
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/06/03
「二藍の文箱」 第13回
地図にない街、地図にない店
~京都、新宿、上野、浅草、池袋。師匠と行った名店の記憶
三遊亭 司
2026/06/02
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第13回
〈書評〉 浅草木馬館日記 (美濃瓢吾 著)
~芸を支えた建物の記憶と不思議な魅力
杉江 松恋
2026/05/29
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第14回
〈書評〉 新宿末広亭 令和の定点観測 (長井好弘 著)
~笑いとともに、芸人の日常と変化、寄席の温かさを描く貴重な記録本
杉江 松恋
2026/06/20
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
シリーズ「思い出の味」 第19回
雪のココア
~内弟子時代に憧れた甘い味
柳家 わさび
2026/01/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第7回
世間せまないか?
~落語家を多数輩出する片田舎、神戸の垂水
桂 三四郎
2026/02/01
編集部のオススメ
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第13回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.3
~橋本さん亡き後に立ちはだかった超大型の壁
シン・道楽亭
2026/05/10
「座布団の片隅から」 第13回
声優
~話題の人気アニメ『あかね噺』で声優デビューさせていただきました!
三遊亭 好二郎
2026/05/07
「ずいひつかつどお」 第10回
なぽりたんといっしょ
~つまり、ナポリタンはボヘミアン・ラプソディなのである
立川 談寛
2026/05/04
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
「二藍の文箱」 第12回
午後の逡巡
~その街に息づいた食堂で、ひとり手酌もまた愉し
三遊亭 司
2026/05/02
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25