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〈書評〉 現代落語論 (立川談志 著)

「芸人本書く派列伝 クラシック」 第9回

消えゆく芸への惜別と肯定

 ではその中で落語はどう現代を生き延びればいいのか、という結論が語られるのが「その五 わたしの落語論」である。

 テレビ用に収録される落語はどう演じられるべきかとか、現代に即した技術論が語られ、芸と人気とどちらが欲しいと聞かれたら「迷わず人気の方をとる」と断じる。後の談志語録から引くならば「現実は常に正しい」からだ。そうした形で現実を肯定しつつ、消滅していくであろう落語の世界に対する惜別の感情を示す。この「その五」で最も鋭いと感じたのは、以下の一文である。

――「受ける芸人」とよく人はいうが、この「受ける」という言葉が、今や、「笑わせる」という言葉に完全に変わってきてしまったといえる。

『現代落語論』内の語彙で言えば、軽演芸的な笑いの追求を談志は理想としているわけではないし、もちろん目標ともしていない。しかしそれが現実である以上、越えなければならない壁であることは理解しているのだ。越えなければならないが、果たして自分以外にそれができる者はいるだろうか。それを考え抜いた果てに出てきたのが「能」と同じ道をたどりそう、という諦念の一語だったのである。

 談志が予測した未来は、自身の活動によって変化した。『現代落語論』は、未来予測の当たり外れを評価しても仕方ない本だ。1965年の談志が行った思考を踏まえた上で、同じような問いを読者が立てることができるかが問われているのである。

 読み返すごとに、その時点の認識が改まる。何度読んでも新たな触発を受ける。稀有な一冊である。

(以上、敬称略)

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  • 書名 : 現代落語論
  • 副題 : 笑わないで下さい
  • シリーズ : 三一新書
  • 著者 : 立川談志
  • 出版社 : 三一書房
  • 書店発売日 : 1965年11月
  • ISBN : 9784380650079
  • 判型・ページ数 : 新書判・280ページ
  • 定価 : 1,100円(本体1,000円+税10%)
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  • 書名 : 現代落語論
  • 副題 : ―
  • シリーズ : 中公文庫
  • 著者 : 立川談志
  • 出版社 : 中央公論新社
  • 書店発売日 : 2025年12月
  • ISBN : 9784122077348
  • 判型・ページ数 : 文庫判・312ページ
  • 定価 : 1,210円(本体1,100円+税10%)

(毎月29日頃、掲載予定)

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