NEW

2026年2月のつれづれ(沢村豊子を偲ぶ会、玉川奈々福の徹底天保水滸伝、帯広浪曲学校)

月刊「浪曲つれづれ」 第10回

浪曲は過去のものではない

 その前日、1月31日にはもう一つ、弟子が師匠に捧げる会が行われた。「玉川奈々福の徹底天保水滸伝」である。

 文芸編集者だった奈々福は、日本浪曲協会が開いていた浪曲三味線教室に参加したことが縁で曲師になった。師匠は三代目玉川福太郎である。やがて曲師から浪曲師に軸足を移していった奈々福は、師匠・福太郎の転機となった会を自らの手でプロデュースする。玉川一門のお家芸である「天保水滸伝」連続読み、「徹底天保水滸伝」である。2004年に開催されたこの会は満員の客を集めた。その様を見て奈々福は、浪曲は過去のものではない、やり方次第では現代に接続する新しい芸だ、との思いを抱いた。

 しかし2007年5月23日、事故のため福太郎は急逝、師匠のいない世界に放り出された奈々福は、自分の手で道を切り拓いてきた。その玉川奈々福が「徹底天保水滸伝」の名を冠した連続の会をやるのである。これを聴かないわけにはいかないではないか。

 第1回の外題は2席、広沢美舟が曲師を務めた。1席目は「助五郎の義侠」、新作である。2席目は、玉川のお家芸である「鹿島の棒祭り」、正岡容原作で人気の平手造酒が主人公である。

 玉川福太郎が「天保水滸伝」の発端としていたのは、笹川の繁蔵の若き日を描いた「繁蔵売り出す」(芝清之作)である。奈々福が「助五郎の義侠」を発端としたのは、すでにある外題に小説などから採った新作を加えることで「天保水滸伝」に新たな風を吹き込もうという狙いだろう。前口上で「天保水滸伝」の主人公二人、笹川の繁蔵と飯岡の助五郎はなぜこんなに互いを憎み合うのか、という疑問が呈された。その根にあるものは「助五郎の義侠」で感じることができるのではないかと言う。原作は伊藤桂一の長篇小説『燃える大利根』である。見事な構想で、まったく新しい「天保水滸伝」が誕生した。

 次回は2月20日、神田愛山の講談台本を浪曲化した「ボロ忠売り出す」「笹川の花会」の2席である。この組み合わせを見て、なるほど、と感じ入るものがあった。ちなみに私は、ありとあらゆる外題の中で二代目玉川勝太郎の「笹川の花会」がいちばん好きかもしれない。

 残席僅少かと思うが、まだ予約は可能だと思う。後悔なきように次回予約を。