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シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.2

月刊「シン・道楽亭コラム」 第10回

 面談のさなか、不動産業者がやって来た。解体業者を連れて。我々の存在や話し合いなどはそっちのけで、「照明を全部取っ払って」「楽屋も壊して」と解体の段取りのやり取りをする。道楽亭は契約上、閉鎖に向けて動いていたのだ。私はそのことを、その場で知った。

 橋本さんが契約している物件を名義変更で継ぐという可能性はなく、何もかもを自分で契約しなければならないという現実。

 不動産業者と解体業者の会話を耳にしながら、私の目は橋本さんの表情を追っていた。人はこんなにも悲しい表情をするのか、というほど、うつろで、力のないそれだった。

 曲がりなりにも自分が14年近くかけてこしらえてきた城が間もなく、跡かたもなく、なくなってしまうという絶望感。落城の主の、途方に暮れた、脱力感。今も思い出せる。

 後からおかみさんから聞いた話だが、面談後の帰り道、橋本さん夫妻は、

 「渡邉さん、継いでくれるかな」
 「分からない、どうだろうな」

 そんなやり取りをしたという。それだけ面談中に私が前のめりになっていなかったという証拠だ。

 「共同席亭」という仕組みをどう具体化するのか、いったい誰をメンバーに誘い入れればいいのか、資金繰りはどうするのか、日々の運営はどうするのか、出口戦略を考える必要があるのか、商売として成立させる設計ができるのか、私自身が抱えている仕事をどうすればいいのか、出演者や道楽亭のお客様に賛同を得られるのか。

 そして何よりも、『片手間にはできないと』いう覚悟を持てるのか、持ち続けることができるのか。手を付けるからには、おいそれとは降りることが許されない、大げさなようだが、生涯を賭した挑みが、私の中で始まろうとしていた。

 ――続きは3ヵ月後の連載で!!!

共同席亭 渡邉寧久

シン・道楽亭の公演スケジュール

https://dourakutei.com/schedule/

         (毎月10日頃、掲載予定)