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第七話 「若手人気落語家殺人事件 【解決編】」

「令和らくご改造計画」

第七話 「若手人気落語家殺人事件 【解決編】」

絵:大熊2号

三遊亭 ごはんつぶ

執筆者

三遊亭 ごはんつぶ

執筆者プロフィール

#1

 落語の世界の住人は、みな寛容である。

 どんな性格の者がいても、その存在を真正面から否定されることは少ない。それは、

 「江戸の長屋は除け者を生まなかった」
 「江戸っ子はおおらかだった」

といった、美談として語られがちだ。落語会のパンフレットや、それらしい解説文にも、そうした言葉はよく並べられる。

 だが、実際はそんな綺麗事ばかりの話ではない。当時だって当然、虐げられた人間はいたはずだ。ただ、そういう人物は落語の中に登場しないだけだろう。

 夢を壊すようで申し訳ないが、落語長屋の穏やかさの正体を、少しだけ分解してみたい。

 現代まで長い時間を超えて語り継がれてきた、いわゆる「洗練された演目」には、いくつかの共通項がある。

 その中でも、最も多くの噺に当てはまる方程式は「人間の情」を中心に描いているかどうか、である。

 乱雑だがどこか素直な八五郎がいて、お人好しで少し抜けている甚兵衛さんがいて、馬鹿だが憎めない与太郎がいる。そこから、噺は始まる。

 だが、もしこれが ――

 乱暴でうるさいだけの八五郎で、愛嬌はなく、迷惑だけをかける甚兵衛で、馬鹿で攻撃的な与太郎だったとしたらどうだろう。

 おそらく、同情できない。嫌な人物が出てきて、人に迷惑をかけ続けるだけの話は、なかなか笑えない。

 たとえば『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を思い浮かべてほしい。主人公の両津勘吉は、毎回のように騒動を起こす。だが、読者は彼を嫌いにはならない。だからこそ、その騒動を楽しめるのだ。

 落語も同じである。大小の差はあれど、ほとんどの噺は「騒動」を描いている。

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