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2026年2月の最前線(聴講記:講談協会「初席」、日本講談協会「講談広小路亭」/2月と3月の注目の公演)
「講談最前線」 第14回
- 講談
講談協会「前座勉強会」(1月14日 お江戸両国亭)
こちらにも足を運んだが、ゲストに真打を迎えるも、基本的に前座の会であるので、演目と簡単な感想のみにとどめることにする。
12:31 神田山兎 「大名花屋」
12:51 一龍斎貞昌 「村越茂助誉れの使者」
13:08 神田ようかん 「谷風の情相撲」
13:37 仲入り
13:51 田辺凌々 「木下藤吉郎」
14:10 神田おりびあ 「曽我の紋づくし」
14:32 田辺銀冶 「仏縁物語」
15:00 終演
おりびあ、ようかん良演。山兎、演じ手は表情を見せる必要もあることから前髪を上げるべきか。読みは度胸あり。凌々は速記に手に入れての一席。更に改良すれば我が物に。貞昌は硬く読み進めるも、その合間に見せる滑稽さが愛嬌に。
日本講談協会「第410回 講談広小路亭」(1月29日 お江戸上野広小路亭)
12:00 神田梅之丞 「寛永宮本武蔵伝 ~山田真龍軒」
小次郎を追って小倉までやって来た武蔵が真龍軒から一戦挑まれる。言葉が生き生きとしている上に、話の勘所が冴えているので、時間の関係で切れ場を迎えても満足感あり。2月から二ツ目に昇進するので、前座としての出演は卒業となる会。
12:06 神田紅希 「道元禅師」
禅師が明全とともに宋の浙江省に学びに行くまでの場面。時間に追われての高座なので、こちらもせせこましくなる。10分をどう構成するかが課題。
12:16 神田陽乃丸 「クレオパトラ」
二代目山陽作。シーザー亡き後のアントニオとの出会いまでを軽快に。陽乃丸が考える思いやクスグリを入れていけば、得意の一席になるはず。
12:26 神田紅純 「照国萬蔵」
最近、取り組んでいる話。この人の力士出世譚は『鬼面山』をはじめ面白い。真面目な中にどこか滑稽さを思わせる読みだからか。一度は土俵を去り、川から身を投げようとしたところを、幡瀬川という力士がそれを止め、新入幕から昭和の大横綱双葉山を破り、横綱になるまで。この力士は他にもエピソードが多いので、紅純の読みで全段を通して聴いてみたい。
12:36 神田紅佳 「春日局」
家光養育までを手際よく。読み慣れた演目とは言え、持ち時間が少ない時にはどこにスポットを当て、どこを肝にするのかを示すがごとき高座。
12:46 松林伯知 「名月若松城」
豊前国の岩石城を攻め入る秀吉勢。その際、蒲生氏郷は命を落としそうになるも、西村権四郎がその窮地を救う。ところが後になって氏郷がそれを認めないので、城を去る権四郎。『西村権四郎』という別名も持つ一席。メリハリの効いた高座。マクラでは、このたび決定した日本講談協会のマスコットキャラクターについて言及。その詳細に関しては、「神田紅・日本講談協会会長 年頭のご挨拶」を参照のこと。
13:01 神田蘭 「古事記」
天の岩戸が開かれる前となる天照大神の閉じ籠りまでを笑いふんだんに。その高座は、スサノヲノミコと張り合うくらいに自由闊達に。
13:17 神田鯉風 「出世証文」
大坂天満で玩具屋を営む喜三郎が商いに失敗し、借財を証文に残し、江戸へ出て出直し。最後には、それまで江戸になかった練羊羹を完成させて大儲けし、それで借財を精算する。先に出世譚が出ているも、大筋は異なり、また正月の高座であれば問題なし。テンポ良く明るく世界を描き出す。松鯉休演の大役を果たした、この日一番の高座。
13:47 仲入り
14:00 神田桜子 「ガネーシャ誕生」
日本を離れた題材で、言ってしまえば、あまり馴染みのないような話は、マクラや話の入口で聴き手の興味を引き付けてから読み始めるという作戦勝ち。ガネーシャがなぜ象の姿?顔?をしているかという、興味深い一席。
14:10 神田阿久鯉 「水戸黄門記 ~高田入り」
越後高田の上杉謙信ゆかりの春日山を訪ねた黄門様が、吹雪いてきた際に熊のいる洞穴を見つけて、熊に助けられるという滑稽さを打ち出した連続物の中の一席。黄門様に人としての温かみを感じることができるのは、話をしかと見つめる阿久鯉のなせる業か。
14:25 神田紫 「笹野名槍伝 ~海賊退治」
仇を追って、九州へ向かう風早丸という船へ乗り込んだ笹野権三郎の前に海賊が現れてというお馴染みの一席だが、ベテランが読むと、軽くも味わい深く引き込まれていく話に。
14:40 神田陽子 「安政三組盃 ~繁蔵出世」
盗人が店に忍び込むという情報を得た小僧の繁蔵。主にそれを告げるも、番頭の入れ知恵で店を追われてしまう。やがて上野の山で出家をして、杉田大蔵と名を変えて出世をする。この日、三席目の出世譚。あくまでも陽気に軽快にが、読み手の信条。
14:56 神田愛山 「北斎と文晁」
清貧に暮らしている偏屈者の葛飾北斎を思い、交際上手の谷文晁が手を差し伸べる物語だが、そんな二人を指して、愛山と琴調が北斎と文晁であるとはけだし名言。竜田川の紅葉を合作する件で、北斎がふと漏らす「夕べ見た夢が悪かった。伯山と肩を組んで『青い山脈』を唄った」というクスグリに笑う。愛山十八番の一席で締めくくり。
15:30 終演
この日は体調不良で神田松鯉が休演で、筆頭弟子の神田鯉風が本来の出番から中入り前へ。また、伯山門下の神田梅之丞が2月から二ツ目に昇進するということもあって、先輩方がその旨をマクラで報告するといったお祝いムードも。トリと中入り前を除き、真打15分、二ツ目10分で、出演者多数という形式も、この日の会までとのこと。
改善策の一案として、二ツ目に15分与えて、真打がどう10分で聴かせるかといった工夫があっても面白いか。さらに今回であれば、読み慣れた演目とは言え、10分で話を無理なくまとめた演者がいたのに対し、そもそも話が長いことから時間をこぼすことがわかっているだろう話をそのままに演じて、結局こぼしてしまうというのは、仕方がないとは言え、その日、どこをどう聴かせるか、そしてどう工夫して読んでいくのかということも意識してもらいたい。