狸札、 野ざらし、 子別れ
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第十二回
- 落語
林家 はな平
2026/04/06
三十五席目 野ざらし (のざらし) ★★
[ワンポイント]
女嫌いの浪人に家に現れた、美人幽霊の真相とは? 八五郎が真似をするが、待っていたのは意外すぎる結末。陽気な釣り場面と極上の言葉遊びが光る、通好みの噺。
◆【あらすじ】
八五郎が夜寝ていると、隣に住む浪人・尾形清十郎の家から女の声がする。ところが清十郎は女嫌いのはず。
翌る日、事の真相を探ろうと清十郎の家に行く。清十郎はとぼけるが、八五郎は「部屋を覗いた」と言い、観念して話し始める。
「あれは、この世のものではない。向島で魚釣りをした帰りに、野ざらしのしゃれこうべ(頭蓋骨)を見つけ、哀れに思いそれに酒を振りかけ、手向けの一句を詠むなど、ねんごろに供養したところ、何とその骨の幽霊がお礼に来てくれた」
それを聞いた八五郎は、興奮した様子で「あんな美人が来てくれるなら、幽霊だってかまわねえ」と、清十郎の釣り道具を借り、酒を買って向島へ向かう。
八五郎は、先にいる釣り客を先客だと思い、間に割って入って釣りを始める。「サイサイ節」を歌いながら陽気に妄想を始める。そのうちに、針を自分の鼻に引っかけて、針を外して釣りをする始末。
釣りは諦め、葦(あし)を掻き分けて探すと、骨を見つけ出す。酒をかけて供養しながら自分の住所を言い、今晩ウチに来て欲しいとお願いをする。
これを聞いていたのが新朝(しんちょう)という幇間(たいこもち)。八五郎が生きている女と約束をしていると思い、二人の間を取り持って儲けようと八五郎の家に行くが……
◆【オチ】
女の幽霊が来ると期待していた八五郎だったが、来たのは知らない男。
八五郎 「お前は誰だ?」
新朝 「あっしは新朝という幇間(たいこ)です」
八五郎 「なに? 新町の太鼓? しまった、さっきのは馬の骨だったか」
◆【解説】
オチ史上、最も難しいオチの1つである。
かなりの落語通でも、このオチを聴いたことがある人は少ないと思う。ほとんどが、釣りの場面で賑やかになったところで切る。
さて、オチである。なんで「馬の骨」と言ったのか? 馬の骨は、「得体の知れない、素性のわからない人」の意味で、これはオモテの意味である。
ウラに潜む意味もある。幇間が新朝と自分の名前を言ったつもりだったが、八五郎は「浅草の新町」と勘違いした。当時、この新町には太鼓屋がたくさんあって、太鼓には馬の皮が使われていた。幇間が新町だから、それに引っ掛けて、「馬の骨」となるわけだ。ちなみにこの噺においては「骨」を「コツ」と発音する。
私ももちろんオチの意味が最初はわからず、先輩に訊いたり調べたりした。調べないとわからないようなオチはやっぱりなかなかやらなくなっていくものだ。
ただ、オチまでは行かないが、骨釣りをする場面はとにかく賑やかだし、お馴染みの「サイサイ節」を気持ちよく歌い上げる演者は多い。むしろ、この「サイサイ節」を歌うためにやっているようにも思える。釣りが好きな噺家もよくやるイメージだ。
『お菊の皿』もそうだが、江戸っ子はたとえ幽霊であろうとも、相手が美人とわかると会いたがる性質がある。私は、相手がどんなに美人でも幽霊は怖いので会いたくない。
いま読まれています!
「エッセイ的な何か」 第12回
5月11日は、ご当地スーパーの日 →土地の味を追い求める男の浪漫
~ご当地スーパーを巡る旅は予期せぬことの連続である
三笑亭 夢丸
2026/05/24
「コソメキネマ」 第十三回
弟子になる
~フランキー堺演じる落語家が活躍する喜劇映画『羽織の大将』をご紹介!
港家 小そめ
2026/05/23
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「二藍の文箱」 第1回
入門前夜
~神様わたしに落語を授けてくださりありがとう
三遊亭 司
2025/06/02
「くだらな観音菩薩」 第13回
願成就院の毘沙門天
~運慶が作った仏像に心が震えた、きく麿師匠。その一方で…
林家 きく麿
2026/05/16
「令和らくご改造計画」
第一話 「危機感をあなたに」
~笑撃のストーリーが今、始まる!
三遊亭 ごはんつぶ
2025/08/12
「講談最前線」 第18回
2026年5月の最前線 【前編】 (聴講記:大阪・連続講談千鳥亭 / 講談『太閤記』小考②)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/05/13
「二藍の文箱」 第9回
寄席、そちらとこちら
~寄席の客席と楽屋は、やさしさにあふれている
三遊亭 司
2026/02/02
シリーズ「思い出の味」 第6回
茶色いうどん
~自分の未来を見つめる8歳の少年
三遊亭 ごはんつぶ
2025/06/25
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「コソメキネマ」 第十三回
弟子になる
~フランキー堺演じる落語家が活躍する喜劇映画『羽織の大将』をご紹介!
港家 小そめ
2026/05/23
「くだらな観音菩薩」 第13回
願成就院の毘沙門天
~運慶が作った仏像に心が震えた、きく麿師匠。その一方で…
林家 きく麿
2026/05/16
「エッセイ的な何か」 第12回
5月11日は、ご当地スーパーの日 →土地の味を追い求める男の浪漫
~ご当地スーパーを巡る旅は予期せぬことの連続である
三笑亭 夢丸
2026/05/24
「かけはしのしゅんのはなし」 第12回
5月5日は、自転車の日
~あの時、見えた新しい世界と、今知る父の気持ち
春風亭 かけ橋
2026/05/22
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「座布団の片隅から」 第13回
声優
~話題の人気アニメ『あかね噺』で声優デビューさせていただきました!
三遊亭 好二郎
2026/05/07
月刊「シン・道楽亭コラム」 第13回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.3
~橋本さん亡き後に立ちはだかった超大型の壁
シン・道楽亭
2026/05/10
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
シリーズ「思い出の味」 第6回
茶色いうどん
~自分の未来を見つめる8歳の少年
三遊亭 ごはんつぶ
2025/06/25
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「くだらな観音菩薩」 第13回
願成就院の毘沙門天
~運慶が作った仏像に心が震えた、きく麿師匠。その一方で…
林家 きく麿
2026/05/16
月刊「浪曲つれづれ」 第13回
2026年5月のつれづれ(談修・菊春二人会、奈々福の徹底天保水滸伝、孝太郎の記念公演)
~生誕90年。談志師匠と浪曲の絆を追う
杉江 松恋
2026/05/09
「テーマをもらえば考えます」 第9回
頑張れ!!るるめちゃん!!
~5月11日は、ご当地キャラの日。東久留米の“るるめちゃん”を描いてみよう
三遊亭 天どん
2026/04/30
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
シリーズ「思い出の味」 第19回
雪のココア
~内弟子時代に憧れた甘い味
柳家 わさび
2026/01/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第7回
世間せまないか?
~落語家を多数輩出する片田舎、神戸の垂水
桂 三四郎
2026/02/01
編集部のオススメ
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第11回
談志師匠の最後の弟子! 立川談吉 改メ 立川談寛師匠真打昇進披露パーティー
~真打昇進披露パーティー体験レポート②
服部 拓也
2026/04/23
シリーズ「思い出の味」 第23回
カレーのような草枕
~自由でゆるくて、どこか芯がある。かつて新宿にあった名店の最後を描く、愛おしい物語
田辺 一記
2026/04/21
シリーズ「思い出の味」 第22回
亡き父の味と、鰻に導かれる名人の味
~人生と落語と鰻の不思議なご縁
三遊亭 あら馬
2026/04/20
「くだらな観音菩薩」 第12回
日光菩薩と月光菩薩
~怒りと笑いを行き来しながら、菩薩様のような優しさに辿り着くコラム
林家 きく麿
2026/04/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「令和らくご改造計画」
第九話 「地獄のモーニングコール」
~落語家は寝すぎ? 働かなすぎ? 前座が仕掛ける“狂気の作戦”とは!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
「講談最前線」 第16回
2026年4月の最前線 【前編】 (講談協会が一般社団法人として始動へ)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/04/11
月刊「シン・道楽亭コラム」 第12回
一粒の麦 ~世界に広がれ、落語の輪 in 名古屋!
~名古屋の演芸文化を支える多彩な人たちの静かな情熱とリアルな声を追ったコラム
シン・道楽亭
2026/04/10
「座布団の片隅から」 第12回
地獄
~春風亭㐂いち兄さん、柳家小はだ兄さん、三遊亭歌彦さんと僕でスキーに行ってきたのだが…
三遊亭 好二郎
2026/04/07
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25