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このあたり 目に見ゆるものは 皆換金

「朝橘目線」 第12回

 音楽業界では、もう新譜をCDで渡して販売促進、とか全然やらないらしい。CDを再生する機材など、もうご家庭にない、だからもらっても嬉しくない、ということらしい。確かに家にもない。いつからなかったんだろう。記憶にないから、結構前から、なくても大丈夫な人生を送っていたらしい。

 大学生時分、つくば市から高速バスに乗って東京行って、御茶ノ水のディスクユニオン行ったり、渋谷のタワレコ行ったり。当時、好きだったブラジル音楽のCDを探すのがとても楽しかった。ネット通販もなかったあの頃、ラジオで聴いた曲の名前、ミュージシャン名を素早くメモして、それがたまったら遠征。苦労して見つけた一枚の重み、ありがたみ。そういう時代じゃないんだろうけど、物寂しい。

 先日、狭苦しい我が家を整理するため、そうしたCDの処分をすることになった。パソコンにデータは移してあるのでいつでも聴けるし、まあ良いかと、近場のブックオフに持ち込んだ。値がつくまで時間かかるというので一度帰宅したが、両手いっぱいの大荷物が残らずなくなったことで、何とも言えぬ虚しさに包まれた。査定が終わったと聞き、再来店したら、予想よりずっと高い値がついていた。虚しさは消えた。

 無形のものばかりじゃいかん、と言っている自分だが、落語などという完全無形のものを生業にしているわけで、我ながら何言ってんだとは思う。うちは妻も音楽という無形のものを扱う仕事なので、我が子には形あるものを作る人になってほしいなあと、最近思う。日本製のもの、どんどん少なくなっているし。

 先日、稽古用の座布団をネット通販で購入したら、インド製だった。現地の人もまさか、自分の作った座布団の上にこんなおっさんが座ってしゃべってるとは、思いもよらないだろう。インド人もびっくりだ。何はともあれ、日本は今一度、ものづくり大国になるべきだと思う。もっと有形のものを大事にしよう……という主張を紙面・誌面でなく、無形のネット上でしている自分。回りくどいギャグだ。お願い、誰か話楽生Webの書籍化を……。

インドからやってきた座布団。どことなく素朴な味わい

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