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第九話 「地獄のモーニングコール」

「令和らくご改造計画」

第九話 「地獄のモーニングコール」

絵:大熊2号

三遊亭 ごはんつぶ

執筆者

三遊亭 ごはんつぶ

執筆者プロフィール

#1

 落語界には、独特の「体質」がある。

 この体質は、基本的に“変化”を嫌う。いや、嫌うというよりも、変化を必要としていない前提で動いている。

 そもそも、時代に対して完全に鈍い。

 楽屋では、師匠方がよくこう言って笑っている。

 「近頃のことはわかんねえな」

 たとえば、Netflix(ネットフリックス)なんて言葉が出てきても、

 「なんだそれ、巨人の新しい助っ人外国人か?」

 ネット・フリックス(31) キューバ出身……いそうだけれど。

 とにかくそんなやりとりで、ゲラゲラと笑っている。

 その様子だけを切り取れば、確かに微笑ましい。世間一般であれば、ほのぼのとした光景に見えるだろう。

 しかし、これが人前に立つ商売となると話は別なのではないか。

 楽屋にとっての当たり前が、世間にとっての当たり前ではない。このズレを抱えたまま、これから人前で喋る仕事をしていて良いのだろうか。

 落語の本編に、最新の知識は必要ない。

 だが、枕や言葉選び、客席との距離感。そういった部分で世間の感覚を知らないのは、もはや怠慢ではないかとすら思う。

 「歳を取ったからわからない」

 それで済まされる職業ではないはずだ。

 むしろこの業界は、世間の同年代よりも情報を知らないケースも多い。心まで古典化しているのだ。

 これは本当に、笑って済ませて良い話なのだろうか。

 落語が時代に適応しきれていない原因は、こういうところにも潜んでいるのかもしれない。