第九話 「地獄のモーニングコール」
「令和らくご改造計画」
- 落語
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
#3
「本当に若い層に届けようとしている人なんて、一握りもいないじゃないですか。そのくせ“ほしい”“ほしい”って、他力本願にも程がありますよ。他力本願寺のご住職もびっくりです」
「そんな人、いないだろ」
すると、楽屋の裏口がバカっと開き、人が入ってくる。
「どうも、他力本願寺 十九代目 住職です」
「あっ、いたんですね。失礼しました」
そう言って、そのまま丁重にお帰りいただく。
……しかし、確かに彼の言う通りだ。
僕の場合は、日々の高座や稽古、創作は基本として、さらに配信も、動画も、SNSも、やろうとは……思っている。
だが、日々の限られた時間の中ですべてをこなすのは正直しんどく、なかなか前に進まない。気づけば二ツ目になって三年。結果として、満足のいく発信は未だ叶っていないのだ。
小さく息を吐く。
「……ごめん」
すると彼はすぐに首を振った。
「兄さん一人に言っているわけではありません」
それから、少しだけ声のトーンを落とした。
「でも、兄さんが内輪揉めをしている間に、時代は進んでいるんです。落語のアニメも始まりました。新規の層が流れてくる。その受け皿を、誰が作っているんですか?」
「ち、ちょっと待って。心当たりないんだけど、“内輪揉め”ってなんのこと……?」
「賞レースですよ」
「うわ、やば!」
思わず吹き出してしまった。
しかし何となく、彼の言いたいこともわかる。最も優先すべきはそこではないと言うことだろうか。
少し間を置いて、改めて尋ねる。
「で、君は何がしたいの?」
彼は一歩踏み込み、はっきりと答えた。
「先輩方を、もっと働かせます」
「……働いて“ほしい”、じゃなくて?」
ゆっくり首を振る。
「働かせるんです」
第九話 「地獄のモーニングコール」――
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