2026年8月の最前線 【後編】 (聴講記:津の守講談会、田辺凌鶴の会 / 講談『太閤記』小考⑤)
「講談最前線」 第26回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/08/25
墨亭講談研究会の終演後の田辺凌鶴。共演者の神田紅佳、宝井琴人と
講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。
〈8月の最前線【前編】〉はこちら
聴講記:津の守講談会(2026年6月2日 四谷・津の守)
台風襲来。この日は強い雨風には見舞われなかったが、一日グズついた天気(翌日は台風通過予告のため開催中止)。程よく入った場内。陽気疲れ(と言えば良いのか)もあるのか、冷房が心地良くもあり、眠気に襲われるときが……。
13:20 宝井優星「千葉周作~幼年時代」
話の中盤にかかる頃に入場。千葉家の跡取りとなった寅松(於寅松)が日置流の中川勘解由と戦う場面。この秋に二ツ目昇進。武芸物を前に話の緩急が鮮やかになってきた。
13:28 神田伊織「難波戦記~結城秀康」
徳川家康は健康マニアであったので75歳まで永らえることができたというマクラに、相変わらず伊織アイが入っていてユニーク。
駿府の城で竹馬の友である伊達秀宗と結城秀康が碁に興じながら、今後の行く末についてあれこれ。それを耳にした本多佐渡守は、天下が三分する可能性があると家康に進言。一方で、秀康は佐渡守に自分の思いを語って聞かせる……といった、東京ではあまり聴く機会の少ない『難波戦記』を。
軍談だからといって重々しく読むのではなく、明るさを失わず、ややこしい人物関係はわかりやすく、難解な言葉は噛みくだきながらといった「伊織読み」が光る一席。
13:53 宝井琴星「恩讐を越えて」(井原西鶴・原作)
天保年間、武士の大城伝之助と七尾八十郎が争いごとを起こし、伝之助は命を落としてしまう。八十郎の父は手紙を持たせて、伝之助の父伝三郎の元へと息子を送る……。
マクラでは少子化対策はどうにもならないからAIに忖度すればいいなどと、琴星ワールド全開。タイトルは琴星が付けたものか。井原西鶴の「武家義理物語」の中の『我が子を打ち替へ手』の講談化作品。
14:18 中入り
14:40 神田菫花「奴の小万」
今、一番の悩みはカンピョウ(ユウガオ)の芽が出ないことであると、大好きなカンピョウについて熱く語る菫花。神田派の女性講釈師に伝わる女侠客伝を確かな語りで聴かせる。
15:06 神田春陽「徳川天一坊~伊予の山中」
マクラと本題が当たり前のようにリンクする春陽講談の妙。船旅の仕事で出会ったエルビス・プレスリーの物真似芸人は、大会で優勝したばかりに、かえって役作りが大変になった。偽者は本物よりも苦労がつきまとうというマクラから本題へ。
将軍のご落胤として天下を手中に治めようとする天一坊が紀州から一度、九州へ。そして伊予でいよいよ(洒落ではない・笑)行動を起こそうという場面を、張りのある読みと力の入れようで聞かせていく。
これまで『徳川天一坊』を何度も聴いてきたが、こんなに面白い場面であったかと、還暦を迎えるまで繰り返し読み続けていくという決意の元にある、神田春陽の芸の力を感じさせる一席。
15:40 終演
▼講談協会 X
▼神田春陽 X
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