NEW

2026年8月の最前線 【後編】 (聴講記:津の守講談会、田辺凌鶴の会 / 講談『太閤記』小考⑤)

「講談最前線」 第26回

聴講記:田辺凌鶴の会(2026年6月21日 新宿・永谷フリースタジオ新宿Fu-+)

 今年の夏は雨が多い。この日は雨は止んでも、一日中ジメジメとした、梅雨らしい天気。

18:31 田辺凌々「湯水の行水」

 好敵手、成瀬藤蔵と鳥居四郎左衛門の武士の意地からはじまる対決と、共通の敵を前にした時の友情譚。話を真っ直ぐに読むから面白さが出てくる。尻上がりにスピード感が増していき、話の展開を盛り上げる。話中の「ウンガ(のごとく)」は「ウンカ」か。

18:49 田辺凌鶴「黒雲のお辰」

 マクラで師匠、一鶴の思い出を。一緒に旅に行った時に、どうやってヒゲを洗うのかと思っていたら、顔を洗ってそれで終わりだったと(笑)。

 黒木村の農民たちが主君・大和守のために金を江戸へ届けるが、両国でそれをすられてしまい……という、先日、大阪の百年長屋で旭堂南華のを聴いたばかり。この話でいえば、講談特有の言語美で聞かせるというよりも、話の雰囲気を地の文でも表しながら丁寧に読み上げる、凌鶴の読みの魅力が感じられる一席に。

19:25 中入り

19:33 田辺凌鶴「八十三歳の高校生球児」

 一鶴は有名人の話を読んでいたが、自分は有名でない人を読んでいるというマクラから、昭和5年(1930年)生まれの上中別府チエさんの物語を。この名前からして、講談化するにふさわしさを感じないでもない。

 高等教育を受けていない人でも学び直せることを知ったチエさんは、76歳で夜間中学に通うことに。ひょんなことから野球部に入部することになり、大会に出場することにまでなる。84歳で臨んだ決勝戦は敗れてしまうが、チエさんにとっては最高のメダルに……と、実際にあった話であり、原作のある物語を凌鶴が講談に移した作品(2014年6月16日の独演会でネタ下ろし)。

 こういった話になると、独特なフラットな読みが、チエさんや仲間のその時々の思いを確かな形にし、かつユニークな逸話を交えながら、ノンフィクション人情話の一席として読み上げてみせた。

19:59 終演

田辺凌鶴 X