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第九話 「地獄のモーニングコール」

「令和らくご改造計画」

#2 

 そんなことを考えながら、例によって楽屋の片隅で頭を抱えていると、背後から、ドタドタと大きな足音が近づいてきた。

 「兄さん、お話があります」

 振り向くと、前座の前進亭すすむ(ぜんしんてい すすむ)くんだった。まだ19歳。この業界でも、最近では珍しい若さだ。

 彼には大きな野心があり、また器用で気働きも良く、“スーパー前座”などと呼ばれている。

 そのすすむが、今日は妙に険しい顔をしている。

 「すすむくん、話って何?」

 そう問いかけると、彼は一歩踏み込み、まっすぐこちらを見据えた。

 「兄さんは、現状の落語業界をどう思いますか?」

 急に核心を問われ、こちらも言葉を選ぶ。

 「やっぱり、今の演芸ファンだけじゃなくて、若い世代にも落語を届けたいと思う」

 そう答えた瞬間、彼は肩を落としてため息をついた。

 「……またですか」
 「またってなんだよ?」

 ゆっくり顔を上げた彼は、そのまま言葉を続ける。

 「どの落語家に聞いても、大体、そう言うんです。若い人に届いて“ほしい”とか、落語の面白さに気づいて“ほしい”とか」

 一拍置き、少しだけ声が強くなる。

 「でも、僕は知っています。二ツ目や真打の先輩方の大半が、日々を惰性的に過ごしていることを」

 その言葉は、真正面から刺さった。

 思わず視線を逸らす。