NEW

第九話 「地獄のモーニングコール」

「令和らくご改造計画」

#4

 そこで初めて、彼は口元を緩めた。

 「まず、噺家は寝過ぎなんですよ」

 腕を組み、淡々と続ける。

 「1日10時間、11時間寝るという話ばかりですよね」

 苦笑する。

 「でも夜型の仕事だし、仕方ないんじゃない?」

 彼は即座に首を振った。

 「そういう次元じゃありません。起きてても、飲んでいるかスマホ動画を見ているか、人によってはパチンコにゴルフ。で、実働時間が短すぎるんです」

 じっとこちらを見る。

 「兄さんは、どれくらい寝ています?」

 少し考える。

 「……僕は結構いろいろやっていて……6~7時間寝られたらラッキーかな」

 その瞬間、彼の目が変わった。

 「あのね、寝なければいいという話ではありません」

 思わず身を引く。

 「それではパフォーマンスが落ちます。睡眠時間は、きちんと確保してください。僕はそういうことを言っているんじゃないんです」

 完全に説教だった。寝ていなければ許されると思ったのに。

 「あ、ごめんごめん……で、どうするの?」

 そう訊かれると、彼はにっこり笑った。

 「礼儀の文化を使うんです」
 「礼儀?」

 「兄さん、『五貫裁き』って知ってますか?」
 「一応、これでも落語家だから知ってるよ」

 少しむっとして返した。

 彼は、なぜか残念そうな表情をした後で、

 「八五郎が早朝に金を返しに行く噺です。誰にも咎められない形で、相手の生活を乱す」

 と続け、そして静かに言った。

 「僕らも同じことをやります」
 「……何をするって?」