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「講談最前線」 第17回
- 講談
瀧口 雅仁
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14:46 神田香織「フラガール物語」
マクラで「伊織は前座の間にコロナがあって、二ツ目までに6年かかったが、おりびあは4年。古典をほかの講釈師から教わり、成長した! 私は何もしていません(笑)。周りの人が教えてくれて、私は褒めるだけであった」と、愛弟子に関する思いを述べつつ、「織音は今年、真打になって15年、伊織は入門して10年。私は『はだしのゲン』を発表して40年」と、2026年が一門にとって記念の年になるという話をし、「主人公が人生をかけて頑張っていく姿が、おりびあにピッタリ」ということで本題へ。
タイトルから見える、2006年(平成18年)に公開された映画『フラガール』の講談化……といった言葉では片付けられない、あくまでもこの作品がタイトルの副題に付けられる「常磐炭礦余聞」の一つであるということを、今回のフルバージョンを聴いて再確認した。
確かに、昨年度『国宝』で大ヒットを飛ばした李相日監督の作品を基本的になぞっていく展開であることは間違いないが、単なるあらすじを追うような展開ではなく、例えば話の入口で、演者香織の出身地である福島県いわきの歴史や、そこで過ごした自身の経験談、そしていわき湯本温泉の起こりなどを説明しつつ、本題へ入っていく点。映画で言えば、フラガールの先生である平山まどかを演じる松雪泰子が、荒々しい炭鉱夫を前に堂々とした言動を見せる場面を前に「驚いたでしょうねえ。何しろいわきの女はおとなしい」というケレンを挟んでくる点。主役となる谷川紀美子(映画では蒼井優)とその母(同じく富司純子)と平山まどか(同じく松雪泰子)のやり取りを、今の視点からすればジェンダーバトルであると捉えてみせる点。そして運命と諦めてしまうこともできるが、人間変わることができるといった点を、徐々に強調しながら描いていく構成に、単に映画のエッセンスを取り上げて進めていくのではなく、講釈の意義でもある、読み手がストーリーを解釈していくといった、いわば社会派人情話である高座を見た。
そして、映画の中で印象的な場面の一つである、谷川紀美子をフラガールに誘うも、運命に抗うことができずにいわきを去っていく木村早苗(徳永えり)と紀美子の別れの場面で、二人が「じゃあな」を言い交わしていく姿。それが単なる別れではなく、二人だけにとどまらず、フラガールたちのその後の運命がどうなっていくのかを想像させるといったあたりを、話に余韻を与えるように読み、その答えは現在のスパリゾートハワイアンズで活躍をするフラガールの姿にあるといった、聴き手の想像力にしっかりと応えてみせる語りに、神田香織が読み上げる講談『フラガール』の醍醐味を見た。

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