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優雅な航海中の後悔を公開

「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回

変なおっさん登場

船に乗るたびに思い出すのが、高校3年生の時の熊本国体。

レスリング65キロ級フリースタイル・兵庫県代表だった僕は

兵庫県予選で後輩たちを華麗に薙ぎ倒し、見事代表の座を手に入れ

本戦では1回戦で、他県の1年生にギリギリの1点差で勝利し、次の試合でその年のチャンピオンに12秒で華麗に負けるという、なんとも不完全燃焼のまま引退し

体力を余らせた状態で乗った帰りの熊本~神戸便のフェリー。

高校生の僕たち兵庫県レスリングチーム一行が、談話スペースではしゃいでいると

あるおじさんが缶ビールを飲みながら話しかけてきた。

「兄ちゃんたち、元気いいな! なんだ、スポーツでもやってんのか?」

得体の知れないおじさんに話しかけられ、チームの仲間たちは怒られると思ったのか、ちょっと距離を取り始めた。

お酒も飲んでるみたいだし、小さい割に妙に勝ち気なおじさんであまり絡まないほうがいい雰囲気が漂っていた。

ところが、おちょけの上に船の中で変なテンションになっている僕だ。

「そうなんすよ~。レスリングで国体で負けてきたんですよ~」

とノリノリで応戦してみたのだ。

「おい、やめとけって……」
「変なおっさんやって……」
「もうええって……」

ドン引きする友だちを尻目に、喋り続ける高校生の僕。

試合開始のゴングを打ち鳴らす天邪鬼

「こいつらも全員、レスリングの選手なんすよ~」
「そうか~!! お前らビールでも飲むか!?」

いや未成年にいきなりビールを勧めてくるなよ。

たぶん25年前でも、未成年の飲酒は許されていなかったはずだ。

「いや飲みたいんすけど、先生、乗ってるんすよ~」

高校生とはいえ、年上の人に対してアホ丸出しの物言いである。

「そうか!! じゃあジュースでも飲めよ!!」
「アザーーす!!!」

もちろん仲間たちにも勧めたが、完全にドン引きで話に乗ってこない。

そこで、おじさんが言い出したのが

「柔道とかよ~、レスリングはよ~、個人競技だよな~。なのに、あの団体戦ってのがよくわかんねえんだよ。団体っても個人競技だろ? 団体の意味ねえよな!!」

なぜか、ここで僕の天邪鬼がこの言葉に引っかかった。そして

「いや、それも団体競技の1つですね!」

と逆らってみた。

すると、そのおじさんは

「なんでだよ、個人競技だろ!! 群れてやる必要ねえじゃねえか!!」

と急に熱を帯び始めた。

僕にとっては、別に団体競技とか個人競技とか、どうでもいいことだし

「そうですね~」

の一言で全て終わることなのに、引退試合を終えて変なテンションになっている僕は、急にこのおじさんの熱をどれだけ高められるか確かめたいという衝動に駆られた。

簡単に言うと「なんとなく怒らせて」みたくなったのだ。