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愛のおはなみ

「マクラになるかも知れない話」 第九回

のどけき春の小さな悟り

 私は寒いのがとても苦手だがお花見は好きなので、学生時分、社会人時代はもちろん、忙しい前座の間も鈴本演芸場の席が跳ねた後に後輩と上野公園に行ったりなんかしていたが、二ツ目になってさっぱり行かなくなってしまった。

 なぜか――。

 正解は「住んでいる家の真ん前に桜があるから」。

 これには人間の傲慢さを思い知った。朝起きてカーテンを開けると、もう桜が見えるのである。一分咲きから満開、散り終わって青々とするまで全部見えるのである。咲いたかなとか、散っちゃわないかとか、もう思いようがないのだ。

 そうなると、あんなに花見花見言っていたくせに、後輩から「今年もお花見行きましょうよ」とか言われると、間髪を入れず「さみいから、どっかお店で呑もうよお」とか言っている自分がいるのだ。

 なんだこいつ。

 人間とは、かくも身勝手な生き物であります。このことを胸に刻んで生きてゆきます。

 家の前に もろに桜があるならば 春の心はびっくりするほどのどけからまし
 (鬼字余り)

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