社会派講談の旗手 神田香織(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第6回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/07/27
師匠の自由な教えとすれ違い……
― そういった先生方に何か言われましたか。
香織 直接には言われませんでした。私たちはまとめて入りましたから、総体的にみんなが色々と言われて、「山陽さんのところは、こんな女の子ばかり集めて……」と、そんな感じで言われていたそうです(笑)。
― そうした言葉がかえってやってやろうという気持ちを起こさせたのではありませんか。
香織 そこまでは思いませんでしたが、山陽師匠が前座の頃から「何でもやっていいよ。やりたいことは何でもやりなさい」と言ってくれたり、「前座だからって遠慮しなくていい」と言われたので、私もその気になって、国立演芸場を借りて、詩吟の先生方と一緒に忠臣蔵をやったり、詩吟に合わせて剣舞を踊ったりしたんです。
その頃、2~3年、剣舞の先生について教えてもらっていたんです。剣舞という芸と講談という芸を合わせてやれば、和風ミュージカルみたいになると思って、それをやったら、顰蹙(ひんしゅく)を買ったりして……。でも師匠が壁になって守ってくれたといった感じでした。ですから、師匠が山陽でなかったら、私は続かなかったと思います。他の兄弟弟子も、山陽師匠だから自由にあれこれできたんじゃないかなと思います。何をやっても肯定的に許してくれましたから。

― それでは怒られたこととかはないですか。
香織 あまり怒る人ではなかったですね。私は目立つ方ではなかったから。私が出戻りでいわきに帰ってしまった頃に、なかなか会う機会がなくなってしまったんです。同じ頃に師匠が講談協会を出てしまったので、その時、師匠と話し合って、子育てもあるし、身の回りも慌ただしかったので協会に残りたいと話したら、「君は毛色も違うからいいんじゃないか」とか言ってくれたんです。
でもその後、私とそんな話を忘れてしまったらしく、すったもんだがありました。師匠も協会の中で色々なことがあって協会を出た訳ですが、弟子の私が協会に残る選択肢を選んだので、裏切られたという感もあったのではないでしょうか。
しばらく口をきいてもらえないこともあって、私も子育てが大変な頃でしたから、師匠のところにご機嫌伺いに行くこともできなくて、師匠が入院された時に、私のことを色々と言っているということを耳にしたので、ご挨拶に行ったら「君は来るのが少なかったね」と言葉少なめに……。苦労してでも足を運べばよかったなあと思っています。
― 師匠も寂しかったのかも知れませんね。
香織 そうかも知れません。申し訳なかったなあと思います。山陽一門はみなさん優秀で、外に出ようという強い気持ちがあって、そうした背景があるから、今の勢いに繋がっているんだなと思いますね。私はその頃、いわきにいたので、たまにしか東京に来られなかったので、講談協会のいい意味で緩やかな、そして優しい雰囲気に支えられたのかも知れません。
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